泥酔するティーンエイジャーたち

やや大衆紙の傾向のある『ル・キャピタル』紙らしく、センセーショナルなタイトルが踊っている。「若者の4人に1人は既に酔っ払い」。言うまでもなくベルギーでも未成年者(18才未満)の飲酒は禁じられているが、現実はそんなことにお構いなく、深刻な状況を示しているという4月23日付けの特集記事だ(1 ados sur 4 a déjà été ivre. Le Capitale, 2009.4.23, pp.2-3.)。
消費者研究情報センター(CRIOC)が3月に、10才から17才までの若者に対して行った調査によれば、3人に1人が、1回の飲酒で6杯以上のアルコールを飲んだことがあると回答している。また別の調査では、1回以上酔っ払ったことがある(酒を飲んだことがある、ではない)若者は、1992年から2004年までの12年間に18%から26%に増加しているという。
サンーピエール・クリニックでアルコール中毒問題を専門とするレイモン・ギュエイブ医師も、近年特に若者の飲み過ぎが目立つと指摘し、さらに次のように述べる。「以前と今とでは、泥酔に至る成り行きが異なります。以前はイベントで騒ぐなかで飲み過ぎてしまうという感じでした。最近は、できるだけ早く酔っ払うために酒を飲む傾向が見られます。アルコール中毒で人事不省に陥る可能性の高い、危険な飲酒の仕方と言えます。」そして医師は、前日のパーティがどのように終わったか覚えていないような飲み方は、実は命にかかわるのだということを、ティーンエイジャーに教え込んでいく必要があると主張する。
こうした状況が生じる背景の一つとして、「アルコポップ」と呼ばれるアルコール飲料(日本で言えば、コンビニで売っているカクテルドリンクのようなもの)が、若者の間で爆発的に消費されていることがある。ウィリアム・ローソンズ(スコッチとコーラ)、エリストフ・レッド(ウォッカとプラムジュース)、バカルディ・コーラ(ラム酒とコーラ)といった銘柄が特に人気らしいが、どれもアルコール度7%程度のれっきとした酒だ。飲酒問題に取り組むNPOを主宰しているマルタン・ドゥ・ドゥーヴ氏は、「アルコポップはジュースのような味なので、若者は軽い気持ちで飲んでしまう傾向にある。昼時に、授業の合間に、サンドイッチを食べながら飲んでいたりするのです」と事態を深く憂慮している。
しかし、より現代的かつ深刻な問題は、若者が自らの不遇を解消する手段を求めて、無謀な飲酒に手を染めている可能性があることではないか。ベルギーでは若年層の失業率が20%にも達し、多くの未成年者も将来に夢を持てないでいる。2005年のカンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞した「ある子供」が描いた、出口の見えない若者の心の荒廃は、映画のなかだけのことではなく、多くの若年層に共有された「闇」ではないのか。そのはけ口としてすさんだ飲酒が選ばれているのなら、飲酒そのものをどれだけ食い止めようとしても、それは若者の不遇さには決して届かない、一つの「社会政策」に過ぎないのではないだろうか。