銀行の採用計画は意外に安定

米国のサブプライムローン問題に端を発する世界的な経済危機は、現在のところ、もう一段の景気悪化を警戒しつつ、危機脱出への方途を探る時期に入ってきていると言えよう。焦点の一つはもちろん雇用問題であり、企業の今後の採用計画は雇用動向を占う重要な指標と考えられるが、4月20日付けの『レゼコー』紙によれば、フランス国内の銀行に関する限り、前年より減少傾向ながらも相対的に安定水準の採用が予測されているように見える(Les banques françaises prévoient de réduire les recrutements en 2009. Les Echos, 2009.4.20, p.25.)。
フランスで大規模な銀行グループに取材したところ、6大グループのうちほぼ前年並みとしたのが、クレディ・アグリコル(農業金庫)とケース・デパルニュ(貯蓄銀行)、3割前後減少の予定と回答したのが、ソシエテ・ジェネラル、BNPパリバ(以上フランスの2大商業銀行)とバンク・ポピュレール。クレディ・ミュチュエル(相互銀行)は現時点での回答を控えている。
特徴的なのは、各銀行とも金融危機が採用計画に与える影響についてほぼ否定的なことだ。BNPパリバの担当者は、「今年の採用数の減少(昨年4,700人→今年予定3,000人)は、主として退職予定者が減っていることによるものです。経済危機の影響はそれほどないと見ています」とする。さらに前年並みの採用を予定するケース・デパルニュは、「危機は当方の人員採用計画に一切影響を与えていません。退職者を補充しなければならないのは当然ですし、新たに進出予定の部門に対する要員確保も必要ですから」と強気のコメントをしている。
もちろん銀行グループの内部でも、資産管理、資金調達、投資といった部門は縮小傾向にあり、人員の縮減も予想されているようだ。しかし多くの銀行では、窓口部門から管理部門やバックオフィスへの人員配置の見直し、配置転換などによって、グループ全体としての人員削減を最小限に抑えようとしている。
サブプライム問題に直撃され、合併吸収などの憂き目にあった他国の銀行に比べれば、フランスの銀行業界は比較的軽微な影響で済んでいると言えるのかもしれない。少なくとも「影響は軽微だ」と対外的に示せるだけの体力は残っているということだろう。ちょうど4月27日付けの『日本経済新聞』に、日本企業の来年度採用計画の調査結果が発表されたが、日本の3大銀行グループの採用予定は、前年の半分から3分の1という激減を示している。採用形態の違いなども含め単純な比較は禁物だろうが、経済危機の影響の差異なのか、それとも企業戦略に拠るところが大きいのか、フランスと日本の銀行のこの違いには興味が尽きない。

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3月28日の日記に書いた、ホテル・パークハイアット・ヴァンドームの「おやつプラン」が、同ホテルのウェブサイトに載っているのを発見。午後3時から6時まで、テラス席でも楽しめますというのだが、お値段50ユーロ!「おやつ」に50ユーロ出すのかなあ。まあイギリスのホテルでハイティー頼めばそのくらいだろうから、ヴァンドーム広場を見渡しながら「おやつ」食べました、とか話の種にしたりすれば、許容範囲なのかしらん。フランス人がこの企画にどれだけ付き合うのか、実際におやつ食べてるのは外国人ばかり、という可能性も大。