2012-01-01から1年間の記事一覧

街を生きる人々の声集めた本を出版

市井の人々がその生活について語ることばをそのまま集め、多様性と共に一つのイメージを浮かび上がらせようという、ノンフィクションのある種のアプローチは、魅力的に見えるけれど実はそれほど容易に取り組めるものではないだろう。下手をすればただ脈絡の…

身分証明カード発行、なぜ値上げ

市役所の窓口で証明書類等を発行してもらう際に多少の手数料はつきものだが、それもあまりに高額になってくるとちょっと不審な気持ちが起こるだろう。期間を経ないうちにその値段が上がってくるとなればなおさらだ。なぜ値上げするのか、コストがそれほどか…

ルガーノ市に学ぶ?安全なまちづくり

治安をめぐってなんとなく不安感が高まっている社会においては、特に自分が住む近隣(コミュニティ)こそ安全であってほしいという願望には、切実なものがあるだろう。ただし、治安はもはや警察に任せておけば済む問題ではなく、地域として、自らも含めコミ…

「紛争領域」続く商店の夜間・日曜営業

労働時間、とりわけ夜間や日曜日に働くことについて、フランスでは厳しい規制が課せられている。商業についても同様で、このため店は通常遅くない時刻に閉まってしまうし、日曜日についてはカトリック的伝統も手伝って一部例外のところを除けば閉店だ。サル…

高級レストラン「ラセール」、伝統から革新へ

パリ8区、シャンゼリゼ大通りからセーヌ河方面へ少し入ったところに一軒家を構えるレストラン「ラセール」。辻調グループ(調理師専門学校)創始者でフランス料理研究者としても知られた辻静雄氏は、その著書『パリの料亭』(新潮文庫、1982年)の巻頭をこの…

ハイパーマーケット「オシャン」、ロシア東欧へ大規模進出

カルフール、E・ルクレールと共に、フランスでハイパーマーケットを展開する三大グループの一翼として知られるオシャン。国内だけでなく南欧など世界各地に大規模な進出を果たしているが、現在は特に東ヨーロッパ方面への拡大を意欲的に進めており、他社の既…

ノルウェン・ルロア、デビュー10年の境地

フランスの代表的民放TF1で放送されるリアリティ型オーディション番組「スターアカデミー」を、かつて何度か見る機会があった。スターを目指す若い男女が合宿所に集められ、その日常生活が番組として毎日流される。週1回の発表ステージで合宿での結果を披露…

万博招致ならず、リエージュの落胆

招致活動といえば昨今の東京に見るように、オリンピックなどスポーツ系の祭典について圧倒的に盛んという印象があるが、国際博覧会についても毎回、候補になった都市(あるいは国)によるプロモーションが大規模に行われている。インフラに対する投資や期間…

気候不順でワイン生産は大苦戦

ワインの生産が気候や気象に著しく左右されることはいわば当然なので、昨今のように(温暖化のせいかは知らないが)異常気象が毎年のごとく起こるようでは、その生産量や品質は恒常的に不安定さを伴っていると言っていいだろう。ワイン製造者はできるだけそ…

食事をめぐる意識は保守的かつ現実主義

フランス人は食事を大事にし、たっぷり時間をかけるとある種の神話のように言うけれど、現代社会のリズムはそうした悠長さをなかなか認めてはくれない。実際、都市部のサラリーマンは、サンドイッチなどで昼食を手軽に済ませるのが普通になっているとも聞く…

交易自由化はチーズ生産に好影響

チーズフォンデュが名物料理の代表格というくらいだから(自分としては味が単調で途中で飽きてしまったが、そんな個人的感想はともかく)、他の農作物、また乳製品と比べても、チーズはスイスにとって圧倒的な地元農産品といってよいのだろう。しかし、周辺…

クリスティアン・コンスタン、料理への情熱

フランスのレストランやグルメ全般に関する話題をしばしば掲載している当ブログ、要するに書き手の趣味と関心に拠るところになっているわけで…。今回のテーマもレストラン、それもシェフへのインタビューが話の中心になっている。10月23日付の無料紙『メトロ…

ローカル鉄道廃止の動きが進展か

大内雅博氏の著作『時刻表に見るスイスの鉄道』(交通新聞社新書、2009年)は、その独特の切り口が最大の魅力になっている。彼はスイスの鉄道事情を、現地を実踏しての調査を交えながら、しかし徹底して時刻表を読み込むことで明らかにしようとしている。ア…

ワイン漫画の表情はさまざま

日本のマンガ界を一瞥すると、マンガで扱われていないテーマなどないように思えてくる。ワインについてだって、言うまでもなく亜樹直原作『神の雫』(2004年連載開始)は社会現象になるほどのヒットを勝ち得ていたし、ルーツを辿るなら、城アラキ原作『ソム…

中小の時計業者にも不況の波

スイスの主要工業である時計業界に関して、世界的不況にもかかわらず今年前半は業績好調との状況が続いていたことは、すでに当ブログで報告済み(5月12日付)だが、それから数か月、情勢にも変化が生じているらしい。不況風が多少ともこの業界で吹くようにな…

薬品の有用性に多くの疑問?

日本で「薬漬け医療」が批判されて久しい。その原因の一つと言われた医薬分業の欠如は、ヨーロッパにおいては無縁のことであるはずだが、どうも医者と薬局がきれいに分かれているからといって、医薬品への依存度が低くなるということではないようだ。最近フ…

緊急時対応電話をめぐる混乱

一般に報道こそされないけれど、日本の緊急時救援を引き受ける2つの電話番号、110番と119番には、多種多様な、本来の目的とは関係のない電話がかかっているのだろう。そんなことを発想したのは、ベルギーではこうした状況が統計で明らかにされ、社会的な問題…

路傍の植物から街路を活性化

下町の路地裏、長屋の軒に並んだ鉢植えの花がそこを行く人々に季節の彩りを伝える…そんな都会生活を原風景に持つ東京生まれの日本人であるせいか、フランス、とりわけパリなどの街並みを辿るにつけ、石造りの建物から歴史の重みを受け取ると同時に、なんとな…

ツイッター発信上位都市にパリがランクイン

ツイッターというのには正直言って今一つなじめない。140字への制限がメッセージの断片化、ひいてはコミュニケーションの断片化につながっているのではという疑いが拭えないからだが、まあ140字だからこそ気軽に発信できるという人々が多いのも事実だろう。…

戦跡探しとは、歴史を辿ること。

遺跡は洋の東西を問わず注目を集める観光の対象。そしていわゆる戦争遺跡についても、特に近代戦のそれは関係者やその子孫が存命な場合もあるだけに、複雑な感情を惹起しがちではあるものの、「歴史の証人」として多くの市民が興味を持つのは当然と言ってよ…

警察官大量退職の背景は給与への不満か

フランスなど各国の警察や警察官をめぐる事情については、このブログでもすでに何回か取り上げているが、やはり大規模な公的機関らしく、抱える課題がいろいろあるのはどの国も共通なようだ。相対的には秩序正しい国と言えるスイスも、日本と比べて治安面で…

「裸足族」パリの街をゆく

自宅で過ごすときは余計な拘束を取り外したくて靴下を脱ぎ、少しぐらい寒くても快適(スリッパなどはまず履かない)なのだが、もちろん戸外は別。砂地(浜辺を除く)や土の上でも、かねて衛生問題が指摘された記憶もあり、自分としては素足でいることは想像…

パリ・オルリー空港周辺をぶらり散歩

飛行機の爆音は日々聞かされれば当然うるさい以外の何物でもないが、たまに離陸の雄姿を目の当たりにするのはとても興味をそそられることでもある。羽田空港近くの公園は、休日など旅客機を眺める親子で賑わうとも聞く。そうなるともちろんパリの空港周辺で…

香水「アナイスアナイス」は80年代の申し子

フランスの新聞では、夏休み期間になると明らかに「これは事前に書きためておいたのではないか」と推測できる特集記事の類が多くなる。ヴァカンスが権利として確立している国のことだけはあるが、もちろん事前準備記事だからといってつまらないわけではなく…

ジョニー・アリディ、メガネCMに終止符?

日本のテレビCMなどと比べると、フランスではいわゆるタレント・芸能人が出演しているケースは非常に少ないように思うのだが、もちろんイメージを大切にするファッション関係や化粧品などでは、歌手や俳優の出番もそれなりに増えてくる。そして、おしゃれア…

現代美術に親しむ子どもたち

コンテンポラリーアートの作品を買い付けるセレブたちについて、このあいだ当ブログ(7月1日付)で紹介したばかりだが、今日も現代美術の話題を取り上げてみよう。大人が見るとなにかと考え過ぎ、かえってわかりにくくなるこの種の作品でも、子どもは余計な…

夏を彩るジュネーブ湖岸の花火大会

今年はこれまでのところ、ライブでは花火を見ていない。あの迫力はテレビで伝達不可能とは分かっているけれど、さしあたり足が向かないのだ。ただそれでも、花火大会のニュースを聞くと何かしら好奇心を動かされることは確か。8月9日付のスイス『トリビュー…

銀行破綻の深刻な影響受ける医療機関

フランスで自治体向け融資等を集中的に手掛ける他、ベルギー、ルクセンブルク、トルコでもリテール銀行として営業してきたデクシアの行き詰まり(昨年10月)については、日本の新聞でも事実関係がある程度取り上げられた。7月31日付の『ラ・クロワ』紙は、フ…

学生の夏休みバイト戦線に異状あり

大学の長い夏休みに学生がアルバイトをするのは日本に限ったことではなく、ベルギーなどでも職業体験と小遣い稼ぎを兼ねてこの時期に働く学生は多い(勉強一途でバイトなんかしない、などということはない)。ただ今年については、肝心の働き口がいつもより…

大学の夏季休暇期間活用法あれこれ

フランスでも大学の夏休みは長い。8、9月まるごと休みといった日本の現状については、「教授も学生ももっと登校してせいぜい研究・勉強すべきだ」といった声も出てきそうな当世ではあるけれど、一方で長期休暇でないと取り組めない課題(地域実習とか、長編…