気候不順でワイン生産は大苦戦

ワインの生産が気候や気象に著しく左右されることはいわば当然なので、昨今のように(温暖化のせいかは知らないが)異常気象が毎年のごとく起こるようでは、その生産量や品質は恒常的に不安定さを伴っていると言っていいだろう。ワイン製造者はできるだけそうした不確定要素を取り除くよう努力するけれど、工夫の余地にも限界はある。11月17-18日付のベルギー『ル・ソワール』紙は、フランスを襲ったひどい異常気象のため、今年のワイン造りは大打撃を受けていると伝える(Les Français ne sont plus les rois du vin. Le Soir, 2012.11.17-18, p.21.)。
フランスは今年、厳しい寒さで幕を開けた。あられが降り霜も多かったことが、4月に雨がひどく降ったのと併せて、ぶどうの開花を遅らせ、また花の数そのものを減らすことにつながった。その後も問題は続き、7月の長雨が要因となってべと病やうどん粉病が大流行。そして最終的にぶどうの凶作という結果に至ったのである。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によれば、フランスでの2012年のワイン生産量は前年比20%弱減の約4千万リットルになると推定されており、イタリア(前年比3%減の見通し)に世界一の座を譲り渡す公算が大きい。
国内の主要な産地が軒並みダメージを受けているのも今年のワイン生産の特徴だが、もちろん地域によって差はある。最も厳しい状況にあるところの一つがシャンパーニュ地方。多くのぶどう生産者が製造を諦めるものと見られており、ボランジェといったブランドメーカーを除き、全体では40%の生産量減が予想されている。品薄から来る稀少化が進み、造られたものの値段は上がるという見通しもないわけではないものの、こちらはまだ不透明な状況だ。一方ボジョレーも30%減という推測が出ていて、ワインの製造を止めるケースが続出している。ローヌ−アルプ地域圏の担当者によれば、約800人のぶどう生産者が国からの不作保障金を申請しているところだという。
一方でボルドー地方は、有機栽培に転換した生産者を中心として天候不順の被害に見舞われたものの、生産減少幅は全体としては10%程度と見られている。ブルゴーニュ地方も約20%減の見込みだが、これとて25年ぶりの大不作であり、しかも場所によって被害の程度にばらつきが大きい。コート・シャロネーズでは30%、コート・ドゥ・ボーヌ南部では最大60%の減少が生じるおそれがある。
こんな状況になってくると、「なんとか事態をしのいだ」、あるいは「うまく切り抜けた」生産者は、上述のようにヴィンテージ全体が品薄であることから逆に巨額の富を得る可能性もあるだろうけれど、あまりその面を強調すべきではないように思う。豊作過ぎるのも問題含みだが、やはり気候が悪いためにワインが造れないというのは困った事態で、来年はぜひ好転してほしいと願うばかりだ。