万博招致ならず、リエージュの落胆

招致活動といえば昨今の東京に見るように、オリンピックなどスポーツ系の祭典について圧倒的に盛んという印象があるが、国際博覧会についても毎回、候補になった都市(あるいは国)によるプロモーションが大規模に行われている。インフラに対する投資や期間中の集客力など、少なからぬ経済効果が短期にも長期にも期待できるからだろう。そうなると当然ながら、結果において勝者もいれば敗者も出る。11月23日付のベルギー『ル・ソワール』紙は、リエージュの2017年万博誘致が失敗に終わった様子を市民の表情と共に報じている(La Cité ardente privée d’Expo. Le Soir, 2012.11.23, p.7.)。
11月22日の午後、パリの国際博覧会事務局で実施された2017年の万博開催都市を選ぶ決選投票。リエージュは44票しか獲得できず、103票を得たカザフスタンの首都、アスタナにダブルスコア以上の大差で敗れた(他に棄権1)。2015年の欧州文化首都を国内で選ぶ争い(2010年)でもモンスに対して敗退したリエージュは、この種の招致運動でいわば2連敗になってしまったわけだ。
ウィリー・ドゥメイエル市長は「大変残念です。自分が残念というより、市民にとって、そしてベルギー国民にとって」と敗戦の弁を述べた。しかも実際のところ敗北感はかなり深刻だ。ここ3年間、同市を売り込むために700万ユーロもの大金が使われ、120もの国に使節が出向いたと言われる。そして投票前日にも公式には「接戦が予想される」との予測が流れていたのだから、関係者も市民もみんながっくりというところではないか。市街中心のサン・ランベール広場に特設された巨大テレビの前で投票の行方を見守った数百人の市民からも、「もうがっかり」といった声が聞かれた。
もっとも『ル・ソワール』紙の見立てによると、冷静になって考えればアスタナの優位は明らかだった。カザフスタンをはじめとする中央アジア諸国の多くは、いまや突出した経済成長率を誇る新興国だし、エネルギー資源産出の面でも注目を集める国が少なくない。長い間ソビエト連邦の辺境国として、国際機関にもほぼ見放されてきた地域が、今日では多国籍企業にとって垂涎の的となっている。こうした場所での万博初開催が注目を集めないはずはなく、その意味では産業衰退に悩む「旧大陸」の一都市にとても勝算はなかったとすら言えるのではないか(広場でテレビを見ていた市民の一人は、「(アスタナの勝因は)結局石油だよ、結構なもんだ」と吐き捨てるようにつぶやいたという)。
それでも、2017リエージュ万博招致委員会のジャン−クリストフ・ペーテルケンヌ委員長は、「結果こそ良いものではありませんでしたが、今日に至るまでの推進力には素晴らしいものがありました」と、敢えて肯定的な見解を披露する。市議会議員の中にも、ここまで検討、整備してきたことを今後に活かし、エコ街区の推進、トラムの新設、市東部ドロワクス地域の再活性化などに取り組めばよいのではないかとの見方を示す者がいる。もちろん、万博が来ないとなればいわゆる推進力が低下するのは避けられないが、今後も街を住み良くするための施策を続けていく上で、今回の招致運動を一つのきっかけにすることはできるのかもしれない。