ツイッター発信上位都市にパリがランクイン

ツイッターというのには正直言って今一つなじめない。140字への制限がメッセージの断片化、ひいてはコミュニケーションの断片化につながっているのではという疑いが拭えないからだが、まあ140字だからこそ気軽に発信できるという人々が多いのも事実だろう。今ではフェイスブックSNSのトップシーンを奪われているとの説もあるようだが、それでも日々世界中で繰り広げられているつぶやきの数たるや超膨大であるのは間違いなく、その影響力は非常に大きい。8月27日付『ル・パリジャン』紙パリ市内版では、フランスの首都での現状を中心にツイッターの現況をレポートしている(Paris, septième ville de monde sur Twitter. Le Parisien – Journal de Paris, 2012.8.27, p.1.)。
仏情報コンサル企業のセミオキャスト社が、ツイートを多く発信している世界の都市ランキングを6月に作成したところ、パリはその第7位に登場した。1位がジャカルタ、3位がロンドン、5位がニューヨークという中での7位(ちなみに新聞記事にはないが、同社の元データによると東京が2位に食い込んでいる)というのはまずまずの好ランクと言うべきか。なんでも、同社は全てのツイートの発信地をGPSの利用によって解析できるようなプログラムを開発し、今回の調査に使用したそうだ。
また、当然のこととはいえ、ツイッターで頻繁に取り上げられるトピックとしても「パリ」は高い地位を占めている。住民の多い大都市であることに加えて、一極集中型の国家構造であることによりフランス政治の話題が必然的にパリに集中すること、さらに数多の外国人観光客がパリについて盛んにツイートすることなども、この結果に大いに貢献している。
パリ市民のツイッター利用状況について言えば、最近はこれまでのような政治や社会に関する話題に触れるツイートに加え、身近な日常生活をつぶやくような内容のものが急激に増えているとされる。隣近所で起こったこと、週末の外出先での出来事から、地下鉄のどの駅で切符の抜き打ち検査をやっているかといった重要情報(!)までテーマは実に多種多様。このことは、以前ならパソコンに詳しい特定の人たちに偏っていたソーシャルメディア利用の裾野が大幅に広がったという現状をよく表していると言える。さらに、ツイッター仲間が集うオフ会(飲み会やランチなど)も盛んなようで、ある参加者は「ツイッターとは巨大かつ24時間営業のビストロのようなものです」と形容している。昔ならカフェやビストロが果たしていた人々の出会いや談話の場としての機能を、今やツイッターなどのSNSがより活発な形で実現しているとでも評価できるだろうか。
ちなみにパリ市役所もツイッターアカウントを持ち、広報ツールとして利用している。ベルトラン・ドラノエ市長(自分のアカウントもあるがつぶやきは比較的まれ)の提唱で2008年にツイッター等による情報発信を所管する専門チームが発足し、その内容を日々吟味している。数か月前には新たに、ホームページ、ブログやツイッターを通じた情報流通を総合的に把握し、とりわけ市民からの質問に回答することを主な役割とする「コミュニティ・マネジャー」という職を新設。難しい質問をいたって気軽にぶつけてくる不特定多数の市民への応対といった任務を遂行している。また彼らの業務には危機管理的な要素もあり、例えば市政に関連する主題をめぐってネットが炎上したような場合には、関係部署にその状況を伝達して迅速な反応ができるよう目指すのだという。
「たかが140字」をめぐって匿名人物の思惑が飛び交い、ときに大きな社会問題の火種にも。誰もがつぶやけ、迅速に情報が流通するというツイッターの良さは明らかであるものの、その大海を泳いでいくのは、フランス社会においてももちろん困難事であるに違いない。市役所の担当者の苦労は十分察せられるところだ。