身分証明カード発行、なぜ値上げ

市役所の窓口で証明書類等を発行してもらう際に多少の手数料はつきものだが、それもあまりに高額になってくるとちょっと不審な気持ちが起こるだろう。期間を経ないうちにその値段が上がってくるとなればなおさらだ。なぜ値上げするのか、コストがそれほどかかるのかと、疑問は尽きないのではないだろうか。12月17日付のベルギー『ラヴニール』紙は、公的に発行される身分証明カードの発行手数料の値上がりに対する疑念の声を伝えている(La carte d’identité passé de 15 à 18 euros. L’Avenir, 2012.12.17, p.5.)。
ベルギーでは2009年の秋から、ICチップ入りの身分証明カードが導入されており、成人の国民はこれを常に携行することが義務付けられている(子ども用には「キッズカード」もあり)。このカードを取得するための手数料が近く値上げされるとの動きをつかんだのは、連邦代議院(下院)議員であるベン・ヴェイツ氏。政府の予算措置に関する文書の中で、カード発行助成費500万ユーロが削除されているのを発見し、即座に新聞でこの事実を公表した。政府が発行にかかる経費の助成を削減することで、その分が住民に転嫁されるのは確実というわけだ。 手数料はコミューンごとに異なるようだが、平均的に見て今後約3ユーロ上がり、18ユーロ程度になると見られている。
もっともこの間の動きはただ値上げだけというわけではない。2013年からはカードの有効期間がこれまでの5年から10年に延長される見通しで、これは手間や費用を軽減する措置だと言えるだろう。しかし同時に、交付に係る地方自治体への連邦補助金が1,000万ユーロ削減される見通しとも言われる。要するにはじめに経費削減ありきということなのではないか。
そもそも身分証明カードが紙の形で導入されてまもない2004年頃は、約4ユーロでこれを手に入れることができたと言われ、「たった8年の間に、大したメリットもないカードのため、4倍もの手数料を払わなければならなくなったんですよ」とヴェイツ氏はかなり憤っている。もちろん当局側は電子カードの効用普及に余念がないが、大方の印象では「銀行での証明用か、ネット上での申告に使う程度」とつれない反応ばかりのようだ。誰もが持たなければならないからこそ、やはり発行に費用がかかり過ぎるのは無理があるのではないだろうか。