ジョニー・アリディ、メガネCMに終止符?

日本のテレビCMなどと比べると、フランスではいわゆるタレント・芸能人が出演しているケースは非常に少ないように思うのだが、もちろんイメージを大切にするファッション関係や化粧品などでは、歌手や俳優の出番もそれなりに増えてくる。そして、おしゃれアイテムの一つとみなされるメガネもその例外ではない。8月13日付の経済紙『レゼコー』では、国民的ロック歌手ジョニー・アリディとメガネ(サングラス)CMとの関係について、その経緯を振り返っている(Johnny Hallyday, l’idole d’Optic 2000. Les Echos, 2012.8.13, p.7.)。
ジョニーとメガネブランドであるオプティック2000(「フランス眼鏡購買連合」(GADOL)が提供する銘柄)がCM出演契約を結んでいたのは、2003年から2011年まで、実に9年の長きに及ぶ。両者の最初の出会いは2001年、オプティック2000の協賛で開催されたチュニジアでの自動車ラリーの会場。同社の社長であるイヴ・ゲナン氏、そのCMを担当する独立系広告企業「ビジネス社」社長のエリック・ブスケ氏とジョニーの3人には、何か意気投合するものがあったようで、翌々年から彼が出演するコマーシャルがスタートした。彼が低音の美声で社名をつぶやくスタイルが好評でCM効果も高まり、それもあって2005年以降現在までに売上高は20%上昇したと言われる。2004年からは彼の妻レティシアも同社の広告に出演するようになった。
メガネ業界においては比較的早い時期から、有名人がCMに出ることの有効性が認識されていた。その先駆けとしては、1985年にアラン・アフルルー社長が自ら宣伝をしてみせた「アフルルー」というブランド(フランチャイズ等でフランス国内に697の販売拠点を有する)があり、その流れはサッカー現役引退後のジネディーヌ・ジダン氏による「グランドプティカル」のコマーシャル出演へとつながっている。しかしそれにしても、販売拠点数でフランス一を誇るオプティック2000(パートナー契約、ライセンス契約を中心に計1,155店舗)におけるジョニー・アリディほど、この分野の広告で存在感を示したタレントは他にいないだろう。CMは、ヒット曲をバックに彼が出演するミニフィルムが流れるというスタイルで、1年に2本の割合で撮影。出演料は年間35万ないし50万ユーロと巨額であったものの、ゲナン社長は「ジョニーの存在は(会社とジョニー自身)双方にメリットがありました」と断言している。
しかし、オプティック2000は2011年をもってジョニー・アリディとの契約を終了することとなる。その背景には、過度の成り金趣味と税金逃れ(2006年以降スイスに居住地を移転)、医師やプロデューサーとの確執といった、マスコミをしばしば賑わせるゴシップの積み重なりがあると言われ、また一方では、2009年の大病以降伝えられる健康不安も影を落としている(つい最近も循環器系の異常で入院した)。ただ同社には「ジョニーが宣伝している会社」というイメージが定着してしまっているため、これをどう取り去るか、あるいは今後、どのような宣伝戦略を取るのか(誰をキャラクターとして起用するかを含む)といった点は容易に片付きそうもない。ブスケ氏は「ジョニーはどこの企業とも契約していない状態ですし、1年後とかにまた一緒にやることもあり得なくはありません」と述べており、ひょっとしたらかつてのCMが復活すること無きにしもあらずという状況だ。それほど有名人と企業広告との関係には、いろいろ複雑なものがあるということだろうか。