フランスからみた「観光都市」ブリュッセルの魅力

海外を自由旅行したい日本の若者が持参するガイドブックとしては、「地球の歩き方」が圧倒的と言えるだろうが、当然のことながら諸外国にも類例はある(アメリカが元祖なのではないかと推測するが、調べてないので不明)。フランス版「地球の歩き方」は「ルータール」シリーズ(意味は「バックパッカー」、なんとまあ直截的な)。このガイドにブリュッセル編が新たに仲間入りする(11月4日発売)というので、『ル・ソワール』紙がさっそく注目、編集長へのインタビューを中心とした記事を10月31日・11月1日付で掲載している(Pour Bruxelles, suivez le guide! Le Soir, 2009.10.31-11.1, p.8.)。
ルータール」では、これまでベルギー編のなかでブリュッセルを取り上げていたのだが、今度は都市として単独で1冊作ることになった。アンドレ・ポンスレ編集長(ブリュッセル出身だが、10年前にパリへ移住)によれば、「都市を楽しむといった旅行スタイルが広がっているところから、本シリーズでも10年来、一都市を取り上げるガイドを刊行してきています。プラハ、ベルリン、バルセロナと来て、ブリュッセルはまあ第二陣ということです」との由。
ポンスレ編集長が評価するブリュッセルの魅力は、まずは何と言ってもTGV「タリス」でパリから1時間20分という近さにあること、それから宿泊料金が安いこと、観光客に対するホスピタリティがあること、マンガ(バンド・デシネ、1月4日付日記を参照)、アール・ヌーボーといったテーマ性のある旅ができることなどいろいろ。さらにワロン語とも呼ばれるベルギーのフランス語は、フランス人からは「エキゾチック」に聞こえるのだそうで、それも興味をかき立てる一つなのだと言う。
もちろん欠点、改善すべき点もないではない。ポンスレ氏は、市内各地区のネットワークが弱い(周遊ルートが組みにくく、交通も便利でないということか)、またゴミ収集が行き届かない感があるのは残念と指摘する。ただ、それでもブリュッセルを独特な観光都市にしているのは、旅行者にとって発見の楽しみがあることだそうだ。パリやロンドンのように、これ見よがしの観光スポットをつないでいけばルートができてしまう都市と違い、歩いて街そのもの、またそれぞれの地区の風景や雰囲気を楽しむのが、ブリュッセルを旅する喜びになるという見方にはとてもうなずける。
この街の出身でありながら、フランス的にしっかり客観的観察をしている編集長の視点はとてもユニーク。「ロンドンとウィーンを足して2で割ったような街」というコメントも(なぜそうなのかわからないが)面白い。ただ、パリと比べてカフェは最高だ、と絶賛するのはどうだろう?好みの問題とは思うが、ブリュッセルのカフェはビールの占めるウエイトが高く、少し重厚過ぎる感じもする。個人的にはパリの明るいカフェ風景がやはり好きなのだけれど。