ユーロ2016の招致進む、ただ先立つものが

2016年のオリンピック開催地はブラジルのリオ・デ・ジャネイロということでめでたく(?)決まったわけだが、同年に開催されるサッカー欧州選手権(ユーロ2016)の開催国決定は来年3月。サッカーに限ればヨーロッパではオリンピックより位置づけが高いとも言われるこの大会、2016年に向けては既にイタリア、トルコ、スウェーデンノルウェー(共同開催)、そしてフランスが招致に名乗りを上げている。11月12日付のフリーペーパー『メトロ』紙は、開催都市候補の選出を中心に、フランス国内での招致活動の動向を伝えている(A ces stades, rien n’est fait. Metro, 2009.11.12, pp.18-19.)。
フランスサッカー連盟の理事会がユーロ2016の開催都市候補として選んだのは、ボルドー、ランス(パ・ドゥ・カレー県)、リール、リヨン、ナンシー、ニース、マルセイユ、パリ、サン・ドニサンテティエンヌストラスブールトゥールーズの12市。最終的には9都市に絞られるのだが、理事会は今回、補欠都市などを具体的に明示しなかった。これは、上記の都市のなかで、自ら脱落するところが出てくるのではないかという算段によるものらしい。有力と見られていたメス、モンペリエはこの段階で既に落選。またレンヌやナントといった国内リーグの有力チームを擁する都市が選ばれなかった結果、ブルターニュなどフランス西部に大きな空白地帯が生じることになった。
さて、開催地候補に挙がった各市の最大の課題はやはり資金調達。フランス政府も、スタジアム等のインフラ整備に1億5,000万ユーロを支出する予定としているが、具体的にどこに投資するかは明らかにしていない。既に補助金の行方を巡って内々の攻防戦が繰り広げられている由。政府や自治体の補助、あるいは民間スポンサーの出資が得られなければ、上でいう「自ら脱落」の憂き目を見ることになるかもしれないわけだから、どこも必死になるわけだ。
別記事で報じられている首都パリの状況も、決して安泰というわけではない(Le Parc se met à l’Euro 2016. Metro, 2009.11.12, p.13.)。1998年ワールドカップのメイン会場だったスタッド・ドゥ・フランスサン・ドニ)の地位は不動だが、問題はもう一つの候補になっているパリ市内のパルク・デ・プランス。サン・ジェルマンFCの本拠地として30年以上の歴史を有するスタジアムも、ユーロ2016の正式な開催施設に選ばれるには、セキュリティ面の整備がまだ不足しているとされる。パリ市長であるベルトラン・ドラノエ氏は、市が責任を持って改修を実施する方針を打ち出し、年内にもパリ市議会に提案する予定とのこと。7,500万ユーロに及ぶと見られる改修費は、現在サン・ジェルマンFCの大株主となっている米投資ファンドコロニー・キャピタルと、スタジアムの長期貸借契約を締結し、その借料を充当するとの意向らしい。ただ他の都市にも言えることだが、世界的に不況感が継続し、また財政にも余裕のない昨今、資金調達が相当困難を極めるであろうことは容易に想像がつく。まあそもそも、フランスが1984年以来の欧州選手権開催国の座を獲得できるかも、現時点では全くわからないわけだが。

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毎日新聞』が、EU大統領就任が決まったHerman van Rompuyベルギー首相を「ファン・ロンパウ」氏と表記している。『日経』『産経』は「ファンロンパイ」氏。Yの字に引きずられず、オランダ語フラマン語)の発音に近づければ、中黒も含めて『毎日』の方がより正しい表記と言える。ただ、「ファン」を名字の一部であり付属物ではないと考えると、ところどころで「ロンパウ氏」と略しているのは正確でないことになるだろう。いずれにしてもこの人、日本語で書くと中国人の名前に見えると思うのは自分だけ?