傍若無人なサイクリストにイエローカード

5月から6月、梅雨に向けてじめじめしがちな日本とは異なり、いよいよ天候が安定し絶好の季節となる北部・中部ヨーロッパ。この時期のサイクリングと言えば、自転車が全国民的に普及し活用されているオランダがまず思い浮かぶが、南隣りのベルギーも比較的平坦な土地であり、ツーリングや自転車での旅行が盛ん。5月22日付の『ラ・キャピタル』紙はこうした季節に合わせ、改めてサイクリストに注意を呼びかけている(Cyclistes, tout ne vous est pas permis! La Capitale, 2010.5.22, p.21.)。
この記事では主に、自転車利用の普及・啓蒙活動を行う団体「一般自転車推進研究会(GRACQ)」のエリック・ニコラ事務局長が、自転車の走行規則(日本で言えば道交法に類するものか)に基づきいろいろと説明を行っている。まず話題に上ったのが、2台横並びで車道を走り続け、車の進路を妨げている自転車。規則によれば、15台以下の自転車の場合、自転車専用レーンがあれば必ずそこを走らなければならないし、車道しかない場合でも後ろから車が近づいたら横並び走行は止めなければならない。15台から50台の自転車が同時に走る場合はグループ走行が認められるが、チームリーダー役と伴走車を置くことが推奨される(50台以上になると両者とも必須)。スポーツとしてもサイクリングがとらえられているせいだろうけれど、グループ走行に関する規則がわざわざ設けられているのが面白い。
「一方通行区間の逆走」も問題になっている。日本と同じく、一方通行は多くの場合「自転車を除く」となっているようだが、そうでない厳密な一方通行路もあって、それを守らない自転車が後を絶たない。都市部で自転車が歩道を走るのも禁止事項。さらに赤信号を守らないというのはもはや言語道断。
我々部外者から見ても実用的な記述もあって、例えば市内走行中の自転車は、トラックや自動車と80センチないし1メートルの間隔を置くべし(自転車事故の20%は車のドアとの衝突で起こっている由)というのは、車の運転者側にもためになる(または反省すべき)知識だろう。またある調査によれば、ベルギーの自転車の30%は前照灯のどこかに故障があるのだという。日常的に自転車を乗りこなす中では、くれぐれも無灯火に陥らないよう特に注意すべきポイントと思われる。
ヨーロッパの自転車は日本に比べてガタイもしっかりしており、走り出せばあっという間に勢いがつく。歩行者から見れば「そこのけそこのけ自転車が通る」、一方で車に対しては弱者扱いで事故が起きればほとんど車側の責任になる。そんなわけでついつい節度を失いがちなのだろうが、そうは言っても事故で多数の死者を出しているのも事実。天気の良さに浮かれずに、ルールを守って安全運転、結局はそれに尽きる話。