ぼくらの水鉄砲戦争

フラッシュモブ」ということばがあるが、その定義には何やら曖昧なところがあるらしい。インターネット等を介して動員した人々によるイベントというだけでは、大規模オフ会とどこが違うのかわからないといった見方もあり、いずれにせよ性急な概念の整理は難しい気がする。少し前に『東京新聞』では、フランスでオフ会が騒乱化して社会問題になっている記事を掲載していた(6月2日)けれど、これもフランスの状況として一般化するのはいかがなものか。一方で、8月2日付のベルギー『ラ・キャピタル』紙には、まただいぶ雰囲気の異なるフラッシュモブの様子が紹介されている(Avec elle, on fusille à l’eau. La Capitale, 2010.8.2, p.8.)。これもまた事例として少し読んでみることにしよう。
ブリュッセルのすぐ南側に隣接するイクセル。在留邦人も比較的多く居住しているこのイクセルの市街地にあるフラジェ広場に、とある日曜日、200人を越す人々が集まって来た。彼らが始めたのは水鉄砲を使った撃ち合いゲーム。約1時間、水に濡れながら歓声を上げる人々と、それを取り囲む見物人とで、大きな広場は大変な賑わいだったという。
このイベントを企画したのは、マイテという22歳の女性。自分のホームページ、ツイッターフェイスブックをフル活用して、これだけの動員にこぎつけたというのだから、なかなかの力技ではある。彼女はこれまでにも、枕投げ大会やシャボン玉大会(それもブリュッセルの観光拠点、あのグラン・プラスで!)などを実施しており経験は豊富。企画の目的はただ一言「楽しいから」。自分が楽しむために、また多くの人々と楽しく過ごすためにフラッシュモブを開くというのがマイテの確固たる考え方だ。
今回は、まずマイテの彼氏が水鉄砲というアイデアを考え出した。マイテによれば、「次のフラッシュモブに向けて全く新しい企画を探していたら、彼が思いついてくれたんです。子どもの頃の夢だったんだって」とのこと。市役所や警察からの許可も下りて、めでたく実現にこぎつけることができた。
『ラ・キャピタル』紙が広場でインタビューしたところ、参加者の反応は大変好評。見物人の中にも、「今後同じようなイベントがあったら参加したい」という人がいた。あまり大規模な騒ぎにもならず、牧歌的な感じが漂っているのがこの企画の良かったところだろう。ベルギーだからこんな様子になるのか、そのあたりはちょっとわからないが、これと同じ雰囲気で今後も続けていければ、批判を受けることもなく、楽しいフラッシュモブとして長続きするのではないだろうか。