商店の営業時間延長、その成果は

今回取り上げるベルギーやその周辺のヨーロッパ諸国で、商店の営業時間が短いという一般的傾向についてはよく知られている。一部のスーパーなど別にすれば、平日は6時頃に終了、日曜日は休みというのが(国によって多少異なるにせよ)普通ではないか。ただ、昨今の景気、また都市郊外のハイパーマーケットなどとの競争事情を考えるとそれではやっていられないというので、ブリュッセル中心市街地ではこの6月3日から、木曜日に限って営業時間を8時まで延長するという試みを始めた。8月2日付『ラ・キャピタル』紙は、2か月が経過したこの取組みの現状について報じている(Shopping du soir: “Pas plus de clients”. La Capitale, 2010.8.2, p.4.)。
ブリュッセル首都圏地域商業開発協議会が中心となり、約300軒の一般商店、さらに普段は夕方に店を閉める軽食堂やカフェも400軒ほど参加して始まったこの企画、商店主たちの評価は実のところかなり否定的。グランプラスに店を構えるエリヌ・ルッブレヒト氏は、「(遅くまで店を開いても)お客さんは増えませんでした。夕食を取るとかちょっと一杯とか、木曜日の夜はみんな別にやることがあるんじゃないですか」と明言する。ヴィスメ地区商業協会(セント・カトリーヌ教会周辺)のマルク・ヴィトホフ氏も、「買物客が増えたということはないです。今の段階で結果をまとめたら、惨憺たるものになるでしょう」との意見だ。時間延長に伴うコスト面を考えると、現時点ではとても引き合いそうにないということだろう。
ただこの記事は、夕方営業の効果なしと決めつけてしまうのは時期尚早という見方も示している。なによりこの試みが6月から始まり、すぐにバカンスの時期に突入してしまったこと(だいたいなんでこんな時期に新企画を打ち上げるのか?)、夏のバーゲンの時期とも重なって、バーゲン目当ての客と夕方の新規集客との区別がつきにくかったことなどがその主な理由。さらに、同じ中心部の商店街でも、グランプラスの少し西側にあるサン・ジャック地区(証券取引所周辺)などでは、それなりの成果があったという意見も出ている。やはり人々の行動パターンが落ち着く秋の結果を経ないと見極めがつかないというのはその通りだと思う。
協議会での本企画責任者であるオーロール・ディ−ジウスト氏は、9月から木曜日の夕方にコンサートを開催したりアペロ(自由参加型ミニパーティー)を行ったりして、近隣の店を側面支援する構想を打ち出した。これまでブリュッセル市民には、平日の夜間に買い物をするといった考えがそもそもなかったわけで、人々に「木曜日の夕方は勤め帰りにショッピングできる」という意識を定着させるにはかなり時間がかかるかもしれない。だが、例えば隣国のオランダでは、木曜日ないし金曜日(都市ごとに異なる)の夜に商店が延長営業する仕組みが安定して続いており、消費者の生活リズムにも完全に根付いている。ベルギーでも今しばらくの我慢と盛り上げのための工夫があれば、いずれは現在の閑古鳥状況も変化してくるのではないか。
まあ、夜間・深夜営業当たり前の日本から見れば、なんとものどか過ぎる話に聞こえるだろうけれど…ね。