ブリュッセル飼い犬事情

犬や猫といったペットの家族の中での存在感は、少子高齢化などの影響を受け、増しこそすれ弱まることはないように思うけれど、いったい日本ではペットがどのくらい飼われているのだろう。飼い犬の統計は厚生労働省で一応まとめているようだが、それが話題になることは少ない。たまたま11月2日付のベルギー『ラ・キャピタル』紙で、ブリュッセルにおける飼い犬の統計について詳しく紹介、分析しているのに出くわしたので、彼の地の様子はどんななのか、軽く読んでみることにする(Les communes les plus chiens. La Capitale, 2010.11.2, p.9.)。
ベルギーではここ10年来、飼犬認証登録協会(ABIEC)にペット等の犬を登録することが義務付けられている。協会のデータによれば、ブリュッセル首都圏地域で飼われている犬の頭数は68,353匹。地区(基礎自治体)ごとのデータもあって、西郊のアンデルレヒト地区、南郊外のユックル地区、それにブリュッセル中央地区で特に数が多い。中でもユックル地区は人口当たりの飼い犬数の割合も高いことが特徴的。中央地区は別(人口が多いので比例して飼い犬も多い)として、郊外は庭の広い住宅が多く、犬を飼いやすい環境にあることが影響しているようだ。また、アンデルレヒト地区は域内に大規模な動物保護センター、さらに犬の訓練学校などがあり、動物に親しみやすい地域環境にあることも、統計を伸ばしている一因とされる。
一方、スヘルベーク、サン−ジル、サン−ジョセといったブリュッセル中心部のすぐ外側にある各地区では犬の登録数が少ない。ABIECの担当者によれば、これらの地区ではマグレブ諸国出身の人々(イスラム教徒の割合が高い)が多く居住しており、彼らは犬を怖がる傾向があるので、愛玩犬の数が少なくなるのだろうとのこと。
なお、ABIECへの登録の際には犬種も報告するようで、この記事ではそのトレンドも紹介されている。最近の人気はまずもってヨークシャー・テリア。次いでジャック・ラッセル・テリアシーズーの順に続いている。一方、牧羊犬など大型の犬(マルノワといったベルギー原産の犬も含む)は、飼うための場所の問題からか敬遠され気味。また、スパニエル、セッター、ペキニーズ、プードル、ダックスフントなども、かつてほどの人気がなくなってきていると言う。
以上が『ラ・キャピタル』紙の記事の内容だが、ちょっと疑問なのは、ABIECによってあらゆる犬が把握されているのかということ。野良犬はいないのか、また産まれた子犬はもれなくきちんと登録されるのか、多少気になる。ただ、犬に対するしつけはヨーロッパの方が日本よりもはるかに行き届いているというから、ABIECへの登録義務も、案外きちんと守られているのかもしれない。