冬のイベントを支える警備員さんに取材

ドイツやフランスなどの各都市で開かれ、夜が長く寒さも厳しいヨーロッパの冬の生活を多少とも彩る存在になっているクリスマスマーケット。ブリュッセルでは「冬の祭典」という形で、物販だけでなく光のページェントスケートリンクなども含めた総合的なイベントとして開催されている。そしてこのような場に欠かせないのが、来場者の安全を守る警備員たちの存在。12月16日付の『ラ・キャピタル』紙は、二人の警備員に密着取材し、その仕事ぶりを追っている(Ils tiennent à l’œil les Plaisirs d’hiver. La Capitale, 2010.12.16, p.8.)。
ブリュッセル冬の祭典」は、旧市街の西部に位置するサント・カトリーヌ地区を中心として、11月26日から1月2日まで開かれている行事。クリスマスマーケットには240ものブースが出店し、土日を中心に地元市民、さらに観光客で賑わう。当然、会場警備にも力を入れる必要があるということで、普段は市内の他地区に配置されている警備員30名がこの期間だけイベント担当になり、2交代制(午前9時から午後4時、午後2時半から午後10時)で勤務に当たっている。
今回『ラ・キャピタル』紙は、警備歴4年のファーミさんと同2年のハザンさんに同行取材する機会を得た。早番(午後4時までの勤務)に割り当てられ、目立つオレンジ色の服を着た2人が最も注意しているのが、すり被害の防止。人混みで観光客も多く、各ブースで紙幣を使う人も多いこのような場では、どうしてもすりが横行しやすい。警備員はすりの手口や防止策などに関する研修を受講済で、この会場でも、すりへの注意ポイントを説明したちらしを配布したり、口の開いたバッグを持った人に注意を促したりして被害の予防に努めている。ファーミさんは、「バッグを地面に置いたまま、高脚テーブルで何か食べている女性をよく見かけますが、これはぜひ止めてほしいです」と話す。
その他、件数は少ないが迷子の対応も警備員が行っており、平均で1日3人が保護されるという。夜になると酔っ払いや喧嘩への対応も必要になるようだが、警備員は例えば怪我をした者の介抱を担当し、暴行した側については警察官が制止、または取り押さえるということで業務の棲み分けを図っている。
会場を巡回していると、来場者から道を尋ねられたり、ときには「おいしいホットワイン売ってるところを教えて」といった質問を受けることも。ブースの店員たちともみんな顔なじみになり、「電線が切れちゃったんだけど」と、およそ職務外の相談をされることすらあるらしい。すりを見逃さないために常に注意深さを必要とする仕事だが、ファーミさんもハザンさんも、日頃の持ち場とは違うこうしたイベント会場で勤務できることがとても楽しいという。お祭りの裏方としていきいきと活躍する様子をとらえた気持ちの良い記事だった。あ、くれぐれもすりに遭って彼らのお世話にならないよう御注意を。日本でも初詣の神社仏閣など、要警戒。