空路混乱で責任の押し付け合い勃発

御存知のとおり昨年末、ちょうどクリスマスを控えた時期に、欧州は大寒波に襲われた。激しい雪で交通機関がマヒし、フランスを含む西ヨーロッパの主要地域では航空便の欠航が相次いだ。ちょうど休暇期と重なったため日頃よりも搭乗客が多く、その分飛行機をめぐるトラブルにも激しいものがあったらしい。12月27日付『ル・パリジャン』紙は、前の週に起こった航空便をめぐる混乱ぶりを振り返り、さらにその「責任の所在」を検討しようとしている(Pagaille dans les aéroports: qui est responsible? Le Parisien, 2010.12.27, p.4.)。
ヨーロッパの空の便は、25日土曜日にはほぼ平常運航に戻ったようだが、それまでの数日間のダイヤ乱れは著しかった。例えばエール・フランスは、木・金の2日間で、パリの2つの空港から出発を予定していた530便を欠航とせざるを得なかった。こうした混乱の責任者としてまず挙げられたのがパリ空港会社(ADP、フランス政府が株の52%を保有する株式会社)。凍結防止剤であるグリコールの空港内ストックが不足していたために、適切な対処ができなかったという説だ。これに対して同社のピエール・グラフ社長は、欠航は環境・国土省民間航空総局の決定によること、アムステルダム、ロンドン、フランクフルト等の欧州各空港も同時期に機能がほぼマヒしていたことなどを挙げて強く反論している。
批判はもちろん航空会社にも向けられる。ナタリー・コシュースコ−モリゼ環境・国土相は、「格安航空会社をはじめとする各航空会社が、旅客に対して(遅延・欠航時に)適切な対応を取るという当然の責任を充分負わなかったのは不適切です」と述べ、やむを得ず離着陸が不可能になった後の航空会社の対応に主要な問題があったと主張。パリの空港を使用する各社の責任者を一堂に集め、ティエリ・マリアーニ交通担当閣外相主宰で1月初めにも開催される会議で、責任の在処を追及する構えを見せる。これに対して例えばエール・フランスは、宿泊を余儀なくされた旅客に対し2,000室、加えて1,000人分の食事を用意したと説明して、自らの採った措置は「不適切」ではなかったと抗弁している。
各方面で責任逃れの思惑ばかりが先行しているようであまり嬉しくないが、外野から見るに、ヨーロッパ全体で空の便が大混乱していたのは事実なので、遅延や欠航といった交通マヒ、そのため発生した旅客対応をめぐる行き違いや人手不足といった事態は結局のところ仕方がなかったのではないか。問題はむしろ、ひとたびダイヤが乱れた後で、今後のスケジュールはどうなるのか、航空会社が何か対応してくれるのかといった情報がほとんど得られないか、または非常に不正確だったということにあるように思われる。旅行会社の連合組織であるトゥールコムのリシャール・ヴェノプロス会長は、「旅行業者、空港、航空会社が直ちに団結して、こうした異常気象(に伴う航空便への障害)が再び発生した時にいかに行動するかを決めていかねばなりません」と主張している。旅客心理としては、確かに情報が不足している状態が一番不安なはず。できるだけていねいに情報を流していくためにどうしたらよいか、そのような方向に関係者の主要な努力を傾けてもらえばよいのではないか。
ル・パリジャン』紙は、シャルル・ド・ゴール空港でまる一昼夜足留めをくらった乗客の顛末を紹介している。ロール夫妻はサントドミンゴでの休暇から帰国して午前11時にパリ到着、モンペリエ行きに乗り継ごうとしたところ、まずは機内で5時間足止め。ロストバゲージのクレームと搭乗便変更のため、エール・フランスのカウンターで延々と列をなし、挙句の果てに当日便は欠航。差し入れはミネラルウォーター1本と毛布1枚しかなく、冷たい床の上で横になって一夜を明かしたという。彼らの憤りはどうにも止めようがないだろうが、もう少し情報提供がうまくいっていれば、多少は落ち着いた状態で時間を過ごせたかもしれない。おそらくはそのことが重要であり、また航空会社や空港でなし得る精一杯の努力かもしれないのである。