風力発電所の立地計画、地元は複雑

地球温暖化等、エネルギー問題の全面的再考が問われている現在、再生可能エネルギーの一つとして大いに注目されている風力発電。ただ一方で、発電所の近隣に騒音や低周波公害をもたらすことも次第に知られつつある。日本より取組みが先進的と言われるヨーロッパ諸国では、その分問題もより深刻。3月8日付、ベルギーの『ラヴニール』紙ブラバン・ワロン州版は、この州内で新たに展開されようとしている風力発電所新設計画をめぐる動きとその問題点について伝えている(Entre 5 et 9 éoliennes sur la champagne de Malèves. L’Avenir Brabant Wallon, 2011.3.8, p.1.)。
発電所を新たに建設する計画が持ち上がっているのは、ブリュッセルの南東約30キロ、ブラバン・ワロン州にあるペルヴェ村と隣接するアンクール村。ゲントにベルギー国内の拠点を有するドイツ企業、エネルヴェスト社が企画し、ここ数週間、関係する土地の所有者に接触を図っているという。同社でこのプロジェクトを担当するジョナサン・ムエ氏は、建設予定地は風力発電所立地に非常に適しているのでぜひ実現させたいと意気込みを示す。立地上のメリットとしては例えば、予定地から一番近い居住地まで600メートルも離れていること、風が強く吹く谷地であって、しかも景観上目立ちにくいといった点が指摘されている。新たに作る巨大風車の数は、ペルヴェ村内で5機、アンクール村内で4機との想定のようだ。
ただ疑念を持たれているのは、エネルヴェスト社が肝心のペルヴェ村には何らの連絡も取っていないこと。4月に予定される立地に関してのワロン地域圏の規制変更の結果を見てから、というのが業者の見解だが、村役場としては発電所建設予定とのニュースをただ驚きをもって迎えるしかない状況にある。いずれはプロジェクト責任者らがカール・カンブロン村長代行ら行政の関係者に面会し、了解を求める日が来るのだろうけれど、その際は、この村がアンドレ・アントワーヌ前村長の時代に風力発電所の新設計画を拒否した経緯もあることを、予め想起しておかなければならないだろう。
ただ業者側も、ただがむしゃらに計画を推進しようとしているわけではないということは、一応付け加えておく必要がある。これまでの例では、風車の建設地そのものの地主とだけ買収交渉等を進めるケースが多かったのに対して、エネルヴェスト社は今回、周辺のかなり広い区域の所有者に働きかけ、パートナーシップを結ぶ方向のようで、こうした丁寧な取組みは評価されてもよいのではないか。ベルギー国内で風力発電が推進される背景には、もともと同国での電力生産が不足しているという厳然たる事実がある。今般、原子力発電の見直しが否応なく進むという状況でもあり、ペルヴェ村の問題については、業者と地元とでなんとか折り合いをつけていく以外に、結局のところ「落としどころ」はないのかもしれない。