街のサンドイッチを徹底比較調査

このところフランスやベルギーなどヨーロッパ諸国では、インフレ、特に食料品などの生活必需品の価格高騰がかなり問題になっているようで、メディアでもいろいろと話題になっている。5月11日付のベルギー『ル・ソワール』紙もインフレ問題も大きく取り上げており、1998年から現在までの間に物価が平均で32%上昇していることを示すとともに、じゃがいも(127%)、卵(76%)などを筆頭として、基本的な食料品などが平均的な物価上昇以上に値上がりしている状況を詳しく報道している。さて、以下では総論的な話はともかくとして、関連記事で取り上げられているサンドイッチに関する彼の地の事情を、詳しく読み込んでみよう(Le sandwich: trop cher pour une qualité discutable. Le Soir, 2011.5.11, p.8.)。
ベルギー人の手軽な昼食と言えばまずサンドイッチ。かつては家で作って職場に持っていくのが多数派だったが、近年では外食する、あるいは店で買って食べるという人々がますます増えている。飲み物とちょっとしたデザートもあわせて、合計6から7ユーロ程度。売り手の方も多様で、個人商店、エクスキやパノスといった軽食チェーン店、スーパーマーケットなどがいわゆる「中食サンドイッチ市場」の奪い合いを繰り広げている。
店売りのサンドイッチも、平均物価上昇率以上の値上がりがあった品目の一つ(45%)だが、『ル・ソワール』紙が今回注目したのが、「価格に見合う味のサンドイッチを人々は食べているのか?」ということ。この点を厳しく審査するために、4人の鑑定人が登場して食べ比べを実施した。ブリュッセル南西部の高級住宅街にあるミシュラン1つ星レストラン「トリュフ・ノワール」のオーナー、ルイジ・チチリエッロ氏。クッキングスタジオ「ムムムー」を経営するカルロ・デ・パスカル氏。高級食品スーパー「ロブ」の商品マネージャー、ニコラ・ラモン氏。そして、栄養士を務めるニコラ・グッゲンビュール氏。いずれ劣らぬ目利き揃い?だ。
食べ比べたサンドイッチは、ベルギーで非常にポピュラーと言われる「アメリカン・サンドイッチ」(牛肉のタルタル、マヨネーズ和えに生野菜)と、それぞれの店で一番高級なサンドイッチの2種類。一方で審査対象は、中心街の個人商店、駅の売店、高級軽食チェーン店、普通の軽食チェーン店、近所のスーパーの5店舗(全て匿名)。普段は家でサンドイッチを用意して食べている(つまり、既製品を買う機会はほとんどない)という鑑定人たちは、都合10個を試食したわけだが、残念なことに、「この味にはがっかり」的な反応が続出した。
とりわけ評判が悪かったのがアメリカン・サンドイッチ。5店舗のうち合格点が出たのは1つだけで、残りは「具がぺちゃぺちゃ」「スポンジのようなパン」「食べられる最低レベルの肉」といった酷評を受けている。ラモン氏は、「アメリカン・サンドイッチは店にとって特に儲けが大きいのです。マージンは原材料によって決まってくるのですが、店で売っているのは全て予め準備された素材を使用。ひどいのになると原価は80サンチーム弱でしかありません」と内情を暴露している。フランスの経済誌『ラ・キャピタル』調べでは、サンドイッチ専門店の利ザヤは、伝統的なレストランの2倍に達していることもあるという。
「高級品」の方は店によって、モッツアレラ・チーズとスモークサーモン、ヤギのチーズ、鳥肉と豚バラ肉のヨーグルトソース和えなど、各種の素材が出揃い、鑑定人の評価もまずまず。それでも1店舗の「ハム、トマトのマリネ」サンドイッチは、「詐欺だ!」と言いだす者が出るくらいの悪評を獲得。パスカル氏は、「消費者がこれらのサンドイッチをしっかり噛み締めて食べるなら、どれもそんなに素晴らしい代物ではないことがわかるはず」と結論付けている。
グッゲンビュール氏は総合的にみて、「こうした物を食べる人たちは大きさが一番で、品質、特に栄養に関することを軽んじているのでしょう」と論評する。確かに、結局はジャンクフードという扱いで、腹が膨れればそれでよいというのがトレンドなのだろう。ただそうなると、別路線として、値段は高いがすごくおいしいというサンドイッチを売り出す店も出て来てもよさそうなもの。スローフードとしてのサンドイッチを提供するニューフェースは現れないのだろうか。