「上天気」の春を過ごして

6月に入るといよいよ夏の始まり。最近、日本での3月から5月にかけての日々は、妙に寒かったり逆に暑かったり極端な気候の日が多く、本当に春らしい陽気というのはかなり少ないのではと感じるのだが、気のせいだろうか。ヨーロッパは冬が厳しい分、春への期待感、春を楽しむ気持ちは日本人以上のものがあるようだ。5月30日付のベルギー『ラ・キャピタル』紙は、素晴らしい好天に恵まれたこの春の気候について数値を紹介しつつ報告している(Le plus beau printemps en 124 années. La Capitale, 2011.5.30, p.14.)。
気象観測上で言う春は原則的には3月から5月までの3か月間だが、厳密には6月1日までカウントされるので5月30日時点の数字は中間報告。それでも、ベルギー王立気象研究所(IRM)のデータによると、今春のベルギーは史上稀にみる絶好な陽気のうちに推移したことが明確にされている。
好天ぶりを示す数値の中でも特に顕著なのが日照時間の多さ。平年だと合計で480時間程度のところが、今年は700時間に達する勢いで、1893年に記録された652時間を上回る観測史上1位に躍り出ることが確実になっている。平均気温は、2007年の12.3度には及ばないものの、12度を超えて史上2位になる見通し(最近高い値が続けて出ているのはやはり温暖化の影響か?)。一方降雨量については、記事の時点で翌火曜日に予想された雨の量がどのくらいになるかによって、史上3位ないし4位の少なさになる状況であり、また降雨日数は6月1日までの時点で計25日ないし26日と想定されるので、1880年(23日)及び1893年(24日)に次いで少ない、第3位の記録となる模様とされる。
どうしてこんな気候になったのか。専門家は、ベルギーの北に高気圧が張り出し、長期間そこから動かなかったことを最大の要因に挙げるが、なぜそういう気圧配置が続いたのかは不明という。その程度だったら素人が言うことと全然変わらないと思うのは間違い?なお夏の予測としては、平均気温は例年より高めに推移するのではとのこと。これが当たるようなら、暑さを謳歌したいベルギー人には朗報になりそう。
ちなみに「好天続き」というのは一般の生活者目線の表現で、当然のことながら農民の反応は別。乾燥傾向の気候、雨不足が農業面で相当問題視されている(フランスではむしろそういった問題意識の記事が目立つ)が、少なくとも短期的には、農地を十分に潤すに足るだけの雨量(例えば1週間雨が降り続くとか)は期待できないと言われる。帯水層の水位も5月末時点で例年の7月終わりのレベルまで下がっており、当面の不安はないというものの、夏の陽気によっては水不足の顕在化につながる可能性も。楽しい春だったが、今後のことを考えるとただ単にその楽しさにひたってはいられない、といったところだろうか。