ラジオのライバル2局が夏季編成でしのぎ削る

以前にもここで似たようなことを書いたかもしれないが、フランスやベルギーなどでは夏になると、テレビやラジオの通常番組はかなりの部分が夏休みに入る(夏前にいったん終了して、継続番組は秋から復活するといった方が正確かもしれない)。司会者や主な出演者(さらにスタッフなども)にヴァカンスを取ってもらうための運用で、さすが欧州とでもいうべきか。日本ではせいぜい1週間程度の夏休みを取るか、あるいは事前に何本かまとめて収録を済ませ、その分少し長めの休みに入るという程度だろう。番組編成上の夏休み期間全面対応というのはちょっと考えられない。
さてもちろんその間、ヨーロッパでも電波自体が停まるわけではないので、代わりの番組が放送される。多分、この期間に番組出演する面々には、将来のレギュラー司会者の地位を目指して、まず2か月ほどの企画に真剣に取り組むといった感じの人も多いのではないか。もちろん放送局自体も、夏は手抜きし放題ということではなく、視聴者・聴取者を獲得すべく知恵を絞っている。7月1日付のベルギー『ラ・キャピタル』紙は、同国の2大ラジオ局(公共放送RTBF、民間放送BEL-RTL)が、それぞれ夏季編成を引っ提げて激突する様子を、具体的な番組紹介を交えて伝えている(”Des auditeurs nous avouent leur turista”. La Capitale, 2011.7.1, p.39.)。
まずはBEL-RTLの方から御紹介。民放はどうしてもディスクジョッキー中心の編成になっているが、平日午前8時半から11時まで放送される「ヴァカンス・ルート」では、番組中(音楽が中心と思われる)に5問のクイズが出題される。問題は曲の歌詞に関するもので、DJが挙げる7つの単語から3つを選び出し、それらの語が使われている曲名を30秒以内に答えるという形式。電話で出場する挑戦者のうち、正解するのは平均して1日1人ぐらい(つまり正答率20%)というのだからかなりの難問だ。8年前からDJを続けているサンドリーヌは、「答えを出すコツとしては、直観を大事にするということでしょうか。戦略をもって臨んでもあまり役には立たないようです」と語っている。そして、出題されるのは有名な曲ばかりと説明し、「グーグルを使ってもらっても構いませんが、30秒しかないので短過ぎますね」と、出題側としての余裕を見せている。こんな背景知識を持ってこのクイズを聞いてみると、少しは面白さも増してくるかもしれない。
これに続く平日の番組(午前11時から午後1時まで)は、「バミューダ・トライアングル」という大仰なタイトル。ベルギー国内で3つの地点を毎日指定し、その3か所に囲まれた地帯からある目的地を探し当てていこうというクイズ仕立ての情報番組だが、はたしてどのくらい盛り上がるか。その他情報系では、土日も含めて毎晩、原則的に午後8時から11時に放送される「夏のテラス」が、期間中国内各地を転々としつつ、各地からゲストトーク、クイズ、コラムなどを繰り広げる趣向となっている。午後11時からの1時間は「ビーチ・パーティ」、60年代を中心とする懐かしのポップ・ロックを、ジョルジュ・ラングのナビゲートで。土曜日正午から1時間は、今年で歌手生活20年、ヤニック・ノアの特集番組を送る。
一方のRTBFは、公共放送らしく相対的に上品そうな企画が並ぶ。目玉と思われるのは、平日の午後1時から3時半まで「ヴィヴァシテ」(第2放送)でオンエアする「大脱走」。7人の選ばれた聴取者代表が、ギリシャ、シカゴ、ケベック、フランス、スペイン、バハマチュニジアから生中継レポートを行い、さらにスタジオからの指令をクリアすべく奮闘。夏の終わりには、各レポーターのヴァカンスのエンジョイぶり、レポート内容や課題クリア実績などを評価して優勝者を決定し、来夏の旅行をプレゼントするという企画らしい。レポーターの巧拙に拠るところが大きそうだが、盛り上げ方次第ではかなり興味深い番組になるかも。
平日の朝、午前9時から11時の第1放送は情報番組「夏らしき日々」。こちらはシンプルかつ爽やかな構成で、「夏に聞こえる音の風景」、「美の歴史」といったラジオコラムをつなぐ形で編成する。同じ第1放送の朝8時20分からは「夏フェスニュース」。各ジャンルの音楽にわたって数多く催されるフェスティバルの案内やレポートなどを伝える。
これらの番組はほとんどがワイド番組のため、オンデマンド放送やポッドキャスト配信はあまりないようだが、インターネット送信は通常通り行われる模様。ラジオ局同士の熱い戦い(?!)の展開ぶりにちょっと耳を傾けてみるのも面白そうに思う。