欧州委員会委員の休日と夏休み

22歳でサヴォワ県議会議員、27歳で国民議会議員に就任。ドゴール派の有力政治家として環境相(1993〜95年)、外相(2004〜05年)等を歴任し、現在は域内市場・サービス担当欧州委員会委員の要職にあるミシェル・バルニエ氏、60歳。多忙な日々を送る彼だが、「(欧州委員会委員は)週末のたびに選挙区に戻らなければならないということもないので、休みはあります」と軽口を叩くぐらいなので、多少の休息の時間は日頃から確保できているようだ。6月25〜26日付の『ラ・クロワ』紙はバルニエ氏にインタビューして、どんなオフを過ごし、休息の時を得ているのかについて尋ねている(≪Je resssens le besoin vital de nager, de courir…≫. La Croix, 2011.6.25-26, p.19.)。
バルニエ氏が週末を過ごすのは、欧州委員会のあるブリュッセル、フランス国内の政治拠点パリと、妻方の田舎ソローニュ地方、そして自身の出身地サヴォワの主に4か所。このうちインタビューでは、パリ以外の3か所について詳しく答えている。ブリュッセルには、1999年からの5年間、地域政策担当の欧州委員会委員として勤務した時も妻子を連れて(単身赴任でなく)滞在しており、場所としての愛着も強い。この街では現代美術を楽しんだり(コンテンポラリーアートについてブリュッセルは世界有数の都市と言える)、映画を見に行ったり、スポーツをしたりして楽しんでいるとのこと。特にスポーツは日曜に限らず、朝早くや夜遅くでも時間を見計らい、週3、4回程度、水泳、ジョギング、サイクリングなどにいそしんでいるというから、かなりアクティブだ。
パリの南南西約140キロ、オルレアンの南に位置するソローニュ地方には、バルニエ氏の妻がその両親から相続した赤レンガの農家があり、彼はそこを改修し別荘として使っている。近くの森には樹齢400年以上のコナラの木があり、彼はこの老木について、「自分は(木を見上げながら)、この木はこれまで数多くの人や出来事を目のあたりにしてきたのだ、といつも言い聞かせています。木は証人のようなもので、人間である自分は一時この世にいるに過ぎないこと、多くの存在、もの、風景が自分より前にあって、また後にも続いていくことを思い起こさせてくれるのです」と語っている。人の生を超えた大きな存在としてコナラの木を見つめ、想いを馳せることで、日々のストレスを少しでも解消しようとしているようだ。彼はまたソローニュで、市場の新鮮な野菜や魚を使った簡単な料理を作ったり、納屋の一室で息の長い思索に耽ったりして、静かな時間を過ごすこともあるらしい。一方、サヴォワでの休日は、イタリア国境に近い高地タランテーズへ、89歳になる母親や兄弟に会いに行くのが主な目的だという。
この夏の予定について尋ねたところ、まず訪れる予定にしているのが、パリの南西約400キロ、ナントに近いヴァンデ県のユー島。バルニエ氏によればこの島は、洗練されたところはないが素朴で休みを過ごすのには良い場所で、とりあえず釣りをするのが楽しみだと今の意気込みを語る。続いてユー島から今度はコルシカ島に向かい、ニコラ・ユロ氏(環境保護派の政治家で、「政治的には別として、古くから個人的な友情を保っている」との由)と再会。そして最後にハイチを訪れて、そこに住む人々の温かさに触れてくるつもりという。「山育ちの私が島好きなのは可笑しいかもしれませんが、島には島の良さがあるというものです」と説明するバルニエ氏。海に親しみ、知人に会い、英気を十分養って秋からの活動に備えようという気持ちが、夏休みへの期待を語る彼の口ぶりから伺えるというものだ。