一般医の「燃え尽き症候群」が深刻

日本で医者は伝統的に、高給取りかつ生活にも余裕があるというイメージを定着させてきたが、最近ではそういうイメージもだいぶ様変わり。地域、専門分野、勤務形態の違い等で事情はさまざまなれど、たとえ給料が多少高くとも非常に過酷な仕事を日々強いられている人たちが少なくないと聞く。そして、細かい部分の差異は別にして、ヨーロッパにおいても似たような厳しい状況は生じているようだ。10月11日付、ベルギーの『ラヴニール』紙は、同国における医師の「燃え尽き症候群」発生事情に関する調査について報じている(Aider les généralistes surchargés. L’Avenir, 2011.10.11, p.6.)。
ベルギー国内の一般医(専門医と異なり、通常の患者の初期治療に携わる医師)に見られる「バーンアウト現象」に関する調査報告書は、公益法人である連邦ヘルスケア情報センター(KCE)によって10月10日に公表された。2005年のデータによれば、一般医のなんと10%もが、いわゆる燃え尽き的な背景に基づき、うつ病様の症状を呈したと言われる。10人に1人というのは相当な数字で、しかもそれが医者に発生しているだけに、しばしば向精神薬の乱用に結びつき易い(薬を手に入れるのが一般の人よりはるかに簡単)という問題も確認されている。患者数に対する一般医の数が少なく、それゆえに過剰労働を余儀なくされるというのがやはり主要な原因なのだが、仮に医師の数を大規模に増やすというような抜本的ではあるが時間のかかる方策が当面は期待できなくても、こうじた実状に対して何らかの方策を取っていかねばならないことは明らかである。
KCEは報告書の中で、差し当たり検討し得る対応策についていくつか指摘している。例えば、一般医に対してヘルスケアサービスを提供する組織の創設、社会保障上の環境整備、医師の過剰労働や健康に関する問題を相互扶助的に検討する支援グループの組織化、そして一般医同士の社会的ネットワークの強化など。さらに報告書は一歩踏み込む形で、医者にかかる患者の側にも知っておいてもらいたい点があると言及する。できれば「医師・患者憲章」といったものを策定する形で、社会的にお互いの権利と義務を認識できるようにしたいとするのだ。確かに、患者たちが揃って、医療スタッフに過剰な期待やサービスを求めないようになれば、一般医をめぐる環境は劇的に改善されるだろう。
ただ、こうしてKCEの提言を縷々挙げてはみても、どうも抽象的であったり、さらに「患者の良識に依存する」という実際上難しい内容だったりするのは否めない。一般医の燃え尽き症候群を本気で減らしたいのなら、やはり彼らの労働環境を抜本的に改善するしかないし、そのためには人員を増やさなければならないだろう。それが困難な中での諸々のアイデアは、結局のところ、問題解決に向けた道のりの遠さを端的に表しているのではないだろうか。