ちょっと不足気味の献血が気がかり

日本では冬になると献血者減少の傾向があると一般に言われる。やはり寒いのでいろいろと億劫になるし、そもそも腕をまくるという気にならないというのもあるだろう。街角で特に多くの献血呼びかけの声を聞くのもこの時期だと思う。ところで、赤十字社献血を一手に扱っているという点では、ベルギーも日本と事情は同じ。12月30日付の『ラ・デルニエール・ウール』紙は、同国における献血の現状を現場の声を取り入れながら伝えている(Don de sang, don de soi. La Dernière Heure, 2011.12.30, p.18.)。
連邦国家というか今や「言語分裂国家」の様相を呈しているベルギー。赤十字社もこの流れに違わず、フランス語圏とオランダ語圏で分かれて運営されている。フランス語圏ベルギー赤十字社は、ワロン地域圏とブリュッセル首都圏地域を管轄。もっとも同社血液局医療担当副部長のミシュリーヌ・ランベルモン氏は、両言語圏の赤十字社が同様の機能構造を有していることを説明しつつ、「もちろん我々は近しい間柄で、必要な時には協力します」と明言(弁明?)している。
献血が実施されるのは、各地に置かれたセンター(フランス語圏内では15か所ほど、主として病院の中にある)と、移動採血車の巡回で各地に設置される臨時献血所。この出張サービスは(日本と同様に)大きな役割を果たしていて、献血の3分の2は移動採血車で行われているという。2010年にはベルギー全土で延べ約30万人(オランダ語地域20万人、フランス語地域10万人)が献血を行い、成分分離の結果約66万パックの血液が医療現場での利用に供された。他方同年の血液必要量は68万パックで、不足した分は前年からのストックで補ったとされる。実はストックといっても限界があって、赤血球は42日、血小板は5日から7日程度しか日持ちしない(血漿は冷凍すれば1年間はもつ)。つまり、ベルギーにおいても献血制度は、ある意味綱渡りというような状況にあるということだ。
実際の献血の手順は日本とだいたい同じ。大きく違うのは通常の献血の場合、その量が450mlとされているあたりだろうか(日本の400mlより多く、200mlというのはそもそもないらしい。体格の違いも反映されていると推定)。成分献血(血小板献血血漿献血)があるのも日本と同様で、所要時間は通常の献血(10分程度)に比べると遥かに長くかかるが(両成分献血を一緒に受けると140分程度)、通常献血が年4回までなのに比べると、成分献血は2週間に1回、または月に1回の割合でできる。
記事では実際に献血に来ていた人へのインタビューも行っている。パスカルは1992年以来、年4回、ほぼ必ず採血所を訪れるという常連。憲兵学校に通っている時に献血の習慣をつけたと言い、この日も勤務を終えた朝にやって来た。「針を刺されることを怖いとは全く思いませんし、気分が悪くなったこともありません」。奥さんはどうですか?と訊ねると、「彼女はちょっと怖がってるようで、ここには来ません」と説明してくれる。一方、自営のコンサルティング業を営むアランは「献血し始めて20年、今は血小板献血しかしてません」とのこと。「(多少時間がかかるとは言え)、1か月に1回、しかも朝だけですから」と、非常に前向きなのが頼もしい。
なお公務員の場合、献血1回につき1日の休暇が与えられるそうで、民間企業でも同様の対応をしているところもある由。言うまでもなくこの記事自体が、市民に献血を促そうという赤十字社の、また新聞社の考えを反映しているわけだが、果たして、読者が新たに足を運んでみるというような、何らかの効果が出てくるだろうか。