ツール・ド・フランスへの期待は既に大きく

今年7月に99回目の大会が開催されるツール・ド・フランス。夏の安易な娯楽としてテレビでこのレースをのんびり鑑賞するのは実に快適なものだが、沿道をすごい勢いで通過する選手たちをその迫力とともに応援することにも(マラソンの現地観戦にも似て)別種の楽しみがあるだろう。2月22日付のベルギー『ラヴニール』紙自転車レース特集では、今年のスタート地点に選ばれたリエージュを中心に、全21日のうち同国内を走る3日間の行程をガイドし、まだ5か月先のイベントに向けた気運を盛り上げている(De Liège à Visé, en passant par Tournai. L’avenir – Supplément Vélo, 2012.2.22, pp.9-10.)。
フランスを代表する自転車競争とはいうものの、ツール・ド・フランスがベルギー国内を通るのは珍しいことではなく、一番近いところでは2010年に、オランダのロッテルダムを出発した集団が1日目(プロローグと呼ばれる初日を除く)にブリュッセルに到着、以後3日目の終わりにフランス国境を通過するまで国内を走破している。ただ今年は、リエージュ市が2004年以来8年ぶりにプロローグ実施地となり、市内周回レースが行われるほか、ナミュールなどフランス語圏ベルギーを縦横に駆け抜けるコースになっているため、とりわけ注目、期待する向きも多いようだ。
リエージュ州のアンドレ・ジル知事は、「各種メディアとも共鳴しつつ世界に向けて開かれ、またこうした大イベントに集まる方々に当地で快く過ごしていただくことは、リエージュ州とその住民の精神に沿うところであります」と荘厳な面持ちで語り、また当地が大規模な文化・スポーツ行事の実施についてノウハウを有していると述べて、歓迎姿勢を強くアピールしている。鉄道(TGV)、空港、河川交通、高速道路といった交通インフラの充実ぶりも、リエージュが積極的に打ち出しているところ。また今後は、広報やマーケティングといった点でも、地元の力量が大いに試されることになる。
6月30日実施のプロローグのルートは、2004年のそれと全く同じ。アルヴォア公園を出発し、ミューズ川の河岸なども含め市街地を反時計回りに走行して、出発地に戻る約6kmのコースとなっている。2004年の実績からすると、特に市内中心地では相当な数の観衆を集めそうだ。翌日(7月1日)はリエージュ州庁舎前のサン−ランベール広場で開会式を挙行した後、起伏の多いベルギーの土地をまずは南下、その後再び北上して、リエージュ市のすぐ西隣りにあるスレンに到着する198kmの行程となる。2日はオランダ国境にほど近いヴィゼが出発地。ほぼ真西に向かってベルギー国内を横断するコースを取り、途中のナミュールでは観光名所でもある城塞に立ち寄るなどした後で、この日の終着地トゥルネーに至る207.5kmのルートがアレンジされている。
早くも3月22日には開催100日前を記念して、カウントダウン時計のお披露目など各種イベントを実施し、熱が込もった対応をスタートさせるリエージュ。観光振興に向けた取り組みが功を奏するとよいと思う。