禁止措置もあり?年越し花火

さていよいよ年も明けたが、ヨーロッパでは、年末年始に花火を上げるのがおおむねどこでも恒例行事になっている。大規模なイベントとして開催されることもあるけれど、個人が自宅の庭や近所の公園などで花火をして(小型の打ち上げ花火に次々と点火したり、爆竹を鳴らしたりする)、新年の到来を祝うのが実に盛んだ。ただ、度が越してしまうこともしばしばなようで、花火を不注意に取り扱うことによる事故が毎年絶えない。12月31日、2013年1月1日付のベルギー『ル・ソワール』紙は、花火による過激なパフォーマンス、あるいは不注意な取扱いの危険性について、識者の意見を掲載している(Faut-il interdire petards à mèche et feux d’artifice? Le Soir, 2012.12.31-2013.1.1, p.11.)。
ベルギーにおいては、近年になって連邦政府が花火問題に関し直接警戒姿勢を取るようになっているのが特徴だ。連邦経済・エネルギー省では販売業者向けと個人向け、2種類のパンフレットを作成し、花火を扱う際の注意点の周知に力を入れている。実際、取扱いの不備や不注意などから、やけどを負う人は毎年少なからずおり、さらに隣国であるオランダやフランス(こちらは7月14日の革命記念日に際して)では指や手の切断を余儀なくされるような事故も起きているとされる(どこの国が花火に関して最も過激かつ危険かについてはいろいろ議論もあるようだが)だけに、警戒の声も強い。
連邦経済・エネルギー省広報官であるシャンタル・デ・パウ氏はこの記事の中で、個人向けの注意点を「花火を購入する場所に注意する」、「(花火を保管したり上げたりする)場所の環境や気候条件に留意する」、「規則を守る」、「子どもに花火を扱わせない」の4点に絞って説明している。販売店舗は経済省がライセンスを与えたところに限定されており、また売られる商品は、公認であることを示す文字や数字が付与されたものに限られる。買ってきた花火は家の中の安全で乾燥した場所に保管する必要があり(ガレージに置いておくのは、子どもがいたずらするかもしれないので厳禁)、実際に遊ぶのも必ず周りの家に危害を加えないような空間でしなければならない(農村地帯でも、犬や馬に悪い影響を与えないように留意すべきとされる)。
とりわけ打ち上げ花火の扱いには細心の配慮が必要だ。マッチやライターで直接火をつけようとするのは非常に危険で、きちんと地面に差した管(ポリ塩化ビニルのものなどが最適)などに収めた上で、導火線を用いて点火しなければならない。良くないのはうまく発射しなかったときに、覗き込んだりもう一度やり直そうとすることで、その瞬間に火薬がはじけて大事故に結びつきかねない。躊躇せずに水をかけ、バケツの中に数時間浸しておくぐらいの慎重さが重要と言われる。
このところとりわけ問題になっているのは、アジア諸国など外国から大量に入って来る、ベルギーでは公認されないような威力(危険度)を持つ花火類だ。ベルギー火傷財団副理事長のジャン−ピエール・アルヌール氏は、これら外国産は(品質が劣っているが故に)しばしば不安定で、手の中で爆発してしまったりすることもあるという。内部に金属の破片を混ぜて光の効果を狙うが、その分飛び散った時の危険が著しく高いというような輸入品もあるそうなので、くれぐれも注意が必要だ。アルヌール氏は、万が一やけどしてしまった時には最低でも15分は冷水をかけ続けるなどの処置を施し、重傷ならすぐ救急外来に向かうようにアドバイスもしている。
もっとも、年越し祝いの恒例行事とあって、花火を全面的に禁止してしまうというのは現実的ではないだろう。デ・パウ広報官は、当面はこの件に関して法規を改正する予定はないとしており、アルヌール氏も「理想的な社会であれば禁止してしまうというのがシンプルでしょうが、その場合、禁止がきちんと守られなければならないですから」と現実的な観測を示している。禁止してしまっても闇市場が横行するだけだという見立てもあるようだ。だから当面必要なのは、少しでも安全性を高め、とりわけ花火の危険な使い方に発する事故を減らす努力(広報など)ということになる。確かに大みそかの晩、打ち上げ花火が街のあちこちで聞こえるというのは一つの風物詩でもあるのだから、その雰囲気は変えず、ともかく危険をなくす努力を皆がこころがけるべきということではないか。