企業倒産が増加中、その深層を探る

経営内容自体が明らかに時代にそぐわなくなった企業が倒産、または何らかの処理策を経て消滅していくことは避けられないところがあるが、それでも会社がつぶれない方がよいことは確か。だからこそ「延命策」と言われても、業容不振な中小企業の経営をなんとか立ち直らせようと、さまざまな金融上の措置が取られたりするのだろう。ところがスイスでは、2012年にむしろ倒産を促進させるようなドライブがかかり、その結果として件数も増えたのではないかと言われている。1月9日付『ル・タン』紙は、昨年のスイス国内における倒産動向とその背景について説明している(Le nombre de faillites en Suisse a artificiellement explosé en 2012. Le Temps, 2013.1.9, p.16.)。
信用リスクを主に扱うコンサル企業、クレディレフォルム社の調べによれば、昨年中に少なくとも1万3,412件の倒産手続がなされたという。これは前年比8.1%の増であり、2009年以降スイスでの企業倒産は毎年増加してきている。確かにリーマン・ショック以降の数年はその影響を受けて経営が立ち行かなくなったところも少なくなかっただろうが、2012年になってもまだ大幅増が見られるのは少々妙だ。しかし、クレディレフォルム社のフランス語圏スイスにおける責任者、エリック・ジロー氏は、これには明確な理由があるのだという。
実は、2012年に発生した倒産の少なからぬ部分は景気低迷による企業業績悪化という要因に基づくのではなく、2008年改正による新しいスイス債務法の適用に関わっているとされる。改正法の731b条では、商業登記簿に記載された会社は全て、その監査を担当する機関を有しなければならないと規定しており、これまでその種の義務がなかった有限会社などにとりわけ大きな影響を及ぼしたとみられる。例えばジュネーブ州では、法の施行後しばらくして、まず4,000社に対し監査機関の配置を促す要請状が送付され、2011年にはこれに従わなかった1,000社に催告が発送されている。そして同年末にジュネーブ州商業登記所は、債務法を適用する目的で900社以上を第一審裁判所に告発した。この間多くの業者が倒産を余儀なくされており、さらに裁判所での手続の中で破産宣告を受けた社も少なくないと考えられる。
同登記所のファビエンヌ・ルフォー・ロドリゲス副所長ら、州当局の関係者も、要因別の倒産数など個々の事実については多少異なる見解を持ちつつも、法改正が倒産の急増に結び付いたという事実自体はおおむね認めている。ただここで、実のところ推定されているのは、こうした措置により「倒産」した会社の多くが、中身を欠いたいわゆる「休眠会社」だったのではないかという点だ。そうだとすれば、昨今のスイスでつぶれる会社が急に増えたという統計的事実は確かにあるけれど、それは取り立てて実態を伴ったものではないということになる。もっとも、こうした事態は「休眠会社」を整理するのに役立ったとして高い評価を受けるものなのか、そのあたりはあまり定かではないようだが。