銘水ペリエの強気なマーケティング

前にも書いたがミネラルウォーター、それもガス入りの水を飲むのが好きだ。ヨーロッパを旅行中、食事の際アルコールを飲まないときは大抵ガス入りの水(炭酸水)を頼んでいた。そんなミネラルウォーターの代表的銘柄であるペリエについて、1月12日付けの『ル・パリジャン』紙の別刷り経済面に詳しい解説が掲載されている(Perrier, le champagne des eaux minérales. Le Parisien Economie, 2009.1.12, pp.6-7.)。
フランス南部、モンペリエ近郊に源泉を持つペリエは、古くは紀元前3世紀の伝説にもその存在が現れている。炭酸水の水源として本格的に注目されたのは19世紀以降で、1888年鉱泉学専門の医師ルイ・ユージェーヌ・ペリエが開発に乗り出した。その後源泉の所有者は数回変わったが、水のブランドとしてペリエの名前は定着するところとなった。
第二次大戦後の1948年、株式仲買人だったギュスターブ・ルーヴェンがイギリス人からペリエを買い取ってからは発展に加速度がつき、独特の形のビン、ツール・ド・フランス全仏オープンへの協賛といった広告・イメージ戦略も当たって、1989年には世界で年間12億本の売り上げを誇るまでに達する。ところが1990年に人為的なミスでベンジンが一部のビンに混入したことが発覚、生産半減の危機を引き起こした。この不祥事からの脱却を図るため、1992年に多国籍企業であるネスレの傘下に入り、再興を目指しているが、2008年の売り上げは8億本と未だ最盛期の3分の2にとどまっている。
さて今後、経済不況の中で、高級イメージのあるペリエの消費がどのような傾向を示すか、大いに注目されるところだが、ペリエ本部長であるアンドレ・サンブリー氏の見解は実に楽観的かつ大胆だ。3年後には現在から25%増の10億本の売り上げを目指すと言う。「不況で水道水を飲む人が増えるでしょうから、普通のミネラルウォーターの消費は減るかもしれませんが、ガス入りの水、とりわけペリエは影響をあまり受けないはずです」と自信ありげだが本当か?現在フランスやベルギー、さらにアメリカでの売り上げ比率が高いのを、今後はロシアやアラブ諸国などに広げていくことで拡販を図るのだそうだ。日本も重要なターゲットに位置づけられており、現在700万本規模であるのを遠からず3倍ぐらいに増やしたい由。
ううむ、個人的にはペリエは嫌いではないが、自分の消費スタイル(冷蔵庫で冷やしておき休日にたっぷり楽しむ)には現在のビンの容量では合わない。1.5リットル入りペットボトル(イタリアのメーカーなど何種類かある)とか出してくれたら買うのだけれど、ビンのデザインにこだわりがあるそうだから、それはないのだろうなあ。