ラジオ国際放送のリストラ計画

有線放送でラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI、フランスの国際放送)を聞き出してから10年以上たつ。今でこそネット上で様々な局のストリーミング放送が聞き放題だが、当時は生のフランス語を24時間聞くことができる唯一の手段。フランス語がほとんど分からないながらも、リスニングの訓練と称して聞き流していたものだ。現在も変わらずニュース中心の編成で、フランスの今の動きを刻々と知ることができる。
そのRFIのリストラ計画が持ち上がり、労働組合が反発しているとの記事を、2月25日付けの『ル・モンド』紙が掲載している(Les salariés de RFI sont toujours mobilisés contre le plan social. Le monde, 2009.2.25, p.15.)。リストラ案は、現在1000人余りの職員のうち206人を削減し、また6言語(ドイツ語、アルバニア語、ポーランド語、セルボ・クロアチア語トルコ語ラオス語)の放送を取りやめるというものである。
解雇を含む人員削減であるから当然組合は猛反対し、多様な運動を進めている。パリ大審裁判所に経営幹部を提訴する一方、「RFI解体に反対する署名」を展開。さらに『リベラシオン』紙にサルコジ大統領宛の公開書簡を掲載したり、元局長であるエルヴェ・ブルジュ氏を担ぎ出して『ル・モンド』紙に支援の投稿をさせたりしている。しかし国や経営幹部に動じる様子は全くないようだ。
RFIは、フランス国民のテレビ・ラジオ受信料からの分配金、さらに国からの補助金で運営されている公共放送であるが、単体でみたときに支出が収入を毎年上回る恒常的赤字状態にあったとされる。この機会に国は1690万ユーロを支出し、これまでの赤字分を一掃することにしている。また今後RFIは、国際放送の統括組織であるAEFの傘下に入り、フランス語圏各国公共放送の協力で運営されているTV5、フランス版CNNテレビの異名を取るニュース専門局フランス24と同列に置かれ、管理を受けることになる。
広告業界出身で、2008年6月に会長に就任したアラン・ド・プージラック氏は、「赤字体質と手を切らなければならない」と明言する。アフリカ諸国を中心に4600万人の聴取者がいるとされる同局を「解体」することは、少なくとも近い将来には行われないと思うが、上述の国際テレビ局との兼ね合いで、今後さらなるリストラが実施される可能性も低くはないのだろう。

                                      • -

リセ(フランスの高校)の哲学の教科書を翻訳したポール・フルキエ『哲学講義』(全4巻)の第3巻(筑摩書房、1976)にこんな記述が。
「一目惚れは実人生よりも小説の中に、小説よりも演劇において、はるかにありふれたものであるのは、劇作家には、一つの愛のゆるやかな開花に我々を立ち会わせるほど十分な時間を与えられていないからである。」(79頁 原好男訳)
しばしば性急な判断に陥りがちな青年へのいましめか。もっとも日本では、第一印象が、見た目が、といった言説が最近はむしろ支配的な感じもするけれど。