欧州議会選挙報道をめぐる各国事情

今週4日から7日にかけて投開票が実施される欧州議会選挙について、日本での報道はかなり寂しい。目にした限りでは、5月29日付けの『毎日新聞』がまとまった記事を載せている程度。しかし、実のところそれも無理はない。EUを構成する各国ですら、選挙への関心は必ずしも高いとは言えないのだから。
欧州議会は「欧州市民を代表するEUの議会。行政執行機関である欧州委員会、加盟国政府で構成する意思決定機関の理事会と並ぶEU主要3機関の一つ。予算を理事会と合同で決め、欧州委員会の提出する法案を審議・修正する。議員は18歳以上のEU市民による直接普通選挙比例代表制)で選出され、任期5年」(上掲『毎日』)といういかにも重要な組織であるはず。国によって関心の度合いはどのように異なるのか?また各国の報道ぶりは?公共ラジオ放送『フランス・アンフォ』所属のジャーナリスト、パトリック・ロジェ氏が、それぞれの国の記者たちに取材した結果を、『ヴァン・ミニュート』紙の記事から見てみよう(Pas de langage commun sur le scrutin. 20 minutes, 2009.5.25, p.23.)。

  • ギリシャ(公共テレビERT記者トメ・パパイオアヌー氏):「このところ急に、この選挙への関心が高まってきたようです。ただそれも(ホットな国内政局の)先触れ的な意味合いしかないのです」
  • ポルトガル(ヴィサオ誌記者アナ・ナバロ・ペドロ氏):「欧州議会選挙への関心は回を追うごとに低下してきたのですが、今年は国内選挙が立て続けにあるせいで、にわかに活気づいています」

以上2ヶ国は、各種地方選挙が総選挙の前哨戦と位置づけられる、日本の現状に近いと言えなくもない。

これはまた、何とも優等生的な。

  • ブルガリア(ドゥネヴニク紙記者ヴラディ・ニコロフ氏):「わが国の大部分のメディアは民主的ジャーナリズムを確立していません。しかも(EU本部のあるブリュッセルなどに)特派員を派遣したくてもお金がありません」

体制転換後発国の現状。

  • ドイツ(ヴェルト紙記者ゲシェ・ヴュッパー氏):「一般の人々の(欧州議会選挙に対する)関心は高いとは言えません。それでも我々は、欧州議会がどのように機能するものなのか、できるだけわかりやすく説明するよう心がけています。ブリュッセルに特派員を2人も置いて、報道の厚みを図っているほどです」

啓蒙的姿勢が顕著。
以上、ちょっとまとめが困難なほどに、各国の様子はバラバラ。ただ、はるか日本から局外漢が物申せば、せっかく超国家的組織の実験に乗り出しているのだから、選挙をきっかけに欧州という連合体への求心力が高まるといったことがあっても良さそうに思うのだが。