列車の運転士、大募集中!

列車の運転士は幼き頃の憧れ。なわとびを丸く結んで「電車ごっこ」をした記憶は遠く、今では車窓から過ぎ去る風景を眺めるのを楽しみにするぐらい。ところが、無料新聞の代表格、『メトロ』紙パリ版の6月17日付けで、鉄道運転士の大規模なリクルートが行われているとの記事を読み、懐かしい思いがよみがえった(La SNCF cherche ses futurs conducteurs. Metro Paris, 2009.6.17, p.14.)。
「当社では10,200人の運転士が勤務しており、そのうち3,000人がパリ近郊線(トランシリアン)の運転に従事しています。2009年は新たに300人の運転士を募集し、また経済危機と関係なくこの募集ペースを今後も続けていくつもりです」と説明するのは、フランス鉄道公社(SNCF)のトランシリアン管区次長であるジル・ゴートラン氏。トランシリアンでは最近、運転本数の増加もあって運転士の不足が目立っているのが実情だ(参考:1月18日付け日記)。雇用不安が広がる中、なんというグッド・ニュース!
職業としての運転士の魅力は「自由」なのだという。イヴリンヌ県アシェールの教育センターで研修に励むギヨーム君(22歳)は、「これまでインターネット関係で働いていたのですが、SNCFで運転士を募集しているのをふと目にしたのです。独力でなんでもこなせるようになれば、上司の目を気にすることなく、運転席で一人仕事ができる。そのことに魅せられました」と語っている。「自律と責任」のもとで旅客の生命を預かり、正確かつ安全に任務を全うすることの矜持とでも言えるだろうか。
ただもちろん「電車ごっこ」とは違い、運転士の世界は甘いものではない。実習生として合格するまでには、厳しい面接、適性検査、健康診断が実施される。不規則な勤務体制など説明されるとおよそ半分の応募者が脱落するそうで、結果として100人から200人に1人ぐらいしか実習生にはなれない。実習は1年半続き、試験に合格することで晴れて正式の運転士となる。
 バカロレア合格者や大学一般過程修了者などからなる実習生には、手取り1,400ユーロほどの給料が与えられる。その後本採用で1,800から2,000ユーロ、TGVに乗務するほどまでになれば給料は3,600ユーロまで上昇する。景気の先行きが必ずしも見えないなか、狭いながらも開いている雇用の門戸。将来のギヨーム君たちには、ぜひ安全運転でフランス全土に広がる公共交通網を盛り立ててくれることを願ってやまない。