アズナヴールは引越好き

前から取り上げたいと思っていたセレブネタ。ハリウッドのスターほどではないが、フランス語圏でも有名人の生活ぶりに注目が集まるのは同じこと。6月24日付けの『トリビューン・ドゥ・ジュネーブ』紙(ジュネーブ地域の一般紙で、決してゴシップペーパーではない)は、なんと1面トップ写真入りで、フランス人歌手シャルル・アズナヴールが最近スイスにある別荘を売却したというニュースを写真入りで伝えている(Aznavour a vendu sa villa de Vandoeuvres. Tribune de Genève, 2009.6.24, p.1, p.17.)。
アルメニアに祖先の地を持ち、今ではフランスの国民的歌手、御年85歳のアズナヴールが売ったのは、ジュネーブ近郊、レマン湖東岸のヴァンドゥーヴルにある、敷地2,384平米、建物294平米のヴィラ。買い手は宝石商と言われ、不動産公報から記者が得た情報によれば、売却価格は900万スイスフラン(註:1スイスフランは約90円)との由。
ただ、これをもってアズナヴール夫妻がスイスを去ってしまうわけではない。彼らは20年このかたジュネーブの近傍にずっと別荘を構えていて、この地を離れる気はさらさらないのだ。今回はヴィラを売却した資金で、そう遠くないところにある高級アパルトマンに移り住むと見られているが、そもそもアズナヴールはこれまでこの地区で10数回の引越しを繰り返しており、今のヴィラに移り住んだのも1年ほど前に過ぎないのだという。
ニヨンの近くに住む彼らの親しい友人によれば、「シャルルは別荘を売ったり買ったりするのを好きでやっているんです。新しいインテリアをしつらえたり、家具を選んだり、大工仕事をしたりするのが楽しいんですね。彼にとっては引越しが趣味みたいなものですよ」とのこと。さすが、85歳にしてまだまだ歌手としても現役(だったはず)、その元気ぶりには驚くばかり。
しかし、アズナヴールの引越しが日常茶飯事だとしたら、『トリビューン』紙はなぜ、ことさらに今回の「事件」を大きく取り上げるのだろう?有名人だから、巨額な不動産取引だから?まあそれもあるだろうけれど、好意的に解釈すれば、フランスのビッグネームが、愛する居住地として常にジュネーブを選んでくれることへの感謝と喜びの気持ちを紙面で表そうとしているのかもしれない。(税金対策とか、背景はおそらく綺麗事ばかりではないのだろうが)