聴取率めぐってラジオ局は悲喜こもごも

どこかで読んだのだが(出典忘れた)、フランスでは日本に比べて、ラジオ放送の一般的なプレゼンスが高いと言われる。聴取率は相対的に高いし、政界の大物がニュースショーにゲスト出演することなども稀ではない。さらにミッテラン政権下の自由化政策の結果、都市部を中心に大小さまざまな局が、FM帯に軒を並べる状況になっている。7月17日付けの経済紙『ラ・トリビューン』紙は、公共放送(NHKのようなもの)や大規模民間放送などのメジャー放送局を中心に展開されている聴取者争奪の現況を、ランキングも交えて報じている(Radio: domination des généralists. La Tribune, 2009.7.17, p.10.)。
まずは、メディアメトリ社が調査した今年第2四半期の聴取率ランキング(平日対象)をご紹介。<1>RTL(民間一般局)<2>フランス・アンテール(公共の総合放送)<3>NRJ(民間の音楽専門局)<4>ユーロップ1(民間一般局)<5>フランス・アンフォ(公共の報道専門放送)<6>スカイロック(民間の音楽専門局)<7>ノスタルジィ(民間のオールディーズ専門局)<8>ファンラジオ(民間の音楽専門局)<9>RMC(民間のニュース&スポーツ局)<10>フランス・ブルー(公共の地域放送)。
昨年の同時期と比較した今回調査結果の特徴は、総合局の躍進、対する音楽局の苦戦であるとされる。その表れが2位と3位、フランス・アンテールとNRJの逆転。前者の総聴取率(1日にその放送局を聞いた人の延べ数に基づく率か?)が0.5ポイント上昇したのに対し、後者では同じ0.5ポイント下落している。
この結果に対し、公共放送局ラジオ・フランスの放送総局長であるフランソワ・デノワイエ氏は「素晴らしい知らせです」とまずは大喜び。そして続けて「でもアンテールはまだまだいけると思います。1位との差はかなりありますが、追いつけないほどではありません」と意欲を見せる。RTL12.1%に対しアンテール10.3%なので、まだ背中が見えるといった状態とは言えないけれど、RTLが0.7ポイントも下げていることもあって、敢えて強気な姿勢を示しているのだろう。
一方追い込まれているのがNRJ。音楽専門局が全体的に劣勢なこともあるが、それでもスカイロックやファンラジオが多少とも聴取率を伸ばしたのに対し、3位への転落という事実には重みがある。昨年8月にNRJグループの音楽メディア総局長に就任したクリストフ・サボ氏は、「厳しいトレンドだが、偶発的な状況によるものと信じたい」と精いっぱいのコメント。同局は朝の時間帯の不振を克服したいとしており、その切り札として、テレビ番組「スターアカデミー」の人気司会者ニコス・アリアガス氏をDJに起用するという。起死回生なるかといった感じだが、就任1年目のサボ氏には早くも辞任のうわさが流れているようだ。
日本でもラジオの聴取率調査週間というのがあって、そのたびに豪華ゲストやプレゼント攻勢で番組は大騒ぎになるが、調査結果や局のコメントが新聞記事になることはまずないような気がする。結局その点も、彼我のラジオ放送のプレゼンスの差を表していると言えるのである。