夏!アイスのトレンドは健康志向・エコ志向

バカンスの季節になると、フランスの新聞では「夏休み特集」といった読み物風の記事が多くなる。要するに記者も休暇を取るので、日々のニュース以外の記事を書きためておくらしい。夏は政治経済の動きが少なくなるし、読者もそれほど不満には思わないだろう。日本では正月の新聞記事が同様のケースといえるかもしれない。
というわけで、7月29日付の『ジュルナル・デュ・ディマンシュ』紙には、アイスクリームの最近事情といった、夏らしい、けれどいかにものんびりした記事が載っている(La glace n’est plus un péché. Le Journal du Dimanche, 2009.7.26, p.22.)。グルメなフランスでアイスが近頃どんな感じになっているのか、ちょっと見てみよう。
フランス人は平均して年6リットルのアイスクリームを食べる(と記事にあるのだが、だから多いのか少ないのかよくわからない)。最近の流れは、できるだけナチュラルなものを買いたい、食べたいということだそうだ。まあいかにもありがちな現代の消費者気質というところか。
パリのアイスクリームショップでも、こうしたトレンドをうまく反映している店に人気が集まる。まず老舗では、セーヌ河上のサン・ルイ島に半世紀余も店を構える「ベルティヨン」。手元にある『地球の歩き方 パリ&近郊の町 ’04〜’05』にも紹介されているこの有名店では、以前からフレッシュな果物を使ったアイスを作っており、美味しさには定評があるという。
一方新規参入組では、イタリアのトリノに拠点を置き、日本でも新宿の丸井に出店している「グロム」が、スローフード・ブームの流れに乗って展開中。パリではオデオン近くに店舗を構え、年末までには本国イタリアを中心に、全世界で32店舗を持つショップになる予定という。イタリア北西部の銘水地リュリシア産のミネラルウォーター、牛乳は全乳使用、カカオやコーヒーは中米産、果物はピエモンテ、ピスタチオはシシリアから、それぞれ品質や栽培状況など厳選したものを運んでいる。「環境にやさしいアイス」としての自負には相当なものがあるようだ。
もう一つの流行りはフローズンヨーグルト。マレ地区やプランタン(デパート)内などパリに3店を有する「マイベリー」は、脂肪分0%でヘルシーなこの「アイス」が売り物。多種多様なトッピング、白とピンクを基調としたスタイリッシュな店構えなどもあいまって、パリっ子たちの話題になっているらしい。
もちろん、大規模なアイスクリームメーカーやスーパーマーケットも、こうした状況を黙って見ているわけではない。著名なアイスのブランドであるミコやベン・アンド・ジェリーズでは、着色料を減らして果汁・果肉の含有率を増やすとか、カロリーを抑えるなどした新製品を売り出しており、安売りスーパーのモノプリは、フローズンヨーグルトを大量に商品ケースに並べている。
いずこも二言目には「健康と環境」。記事全体に広告っぽい記述を感じないわけでもないが、要はアイスひとつとっても、現代のトレンドは非常に明快に見えてくるものだということだろうか。

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7月12日のブログで、外食産業にかかる付加価値税の引き下げについて書いたが、その後1ヶ月。今日の『日本経済新聞』夕刊が、パリ発の記事で、個人経営の店を中心に値下げをしていないところが多いと報じている。だめじゃん〜、そんな露骨なことやっちゃあ。チェーン店はちゃんと値下げしてるんだから、いずれツケがまわってくるよ、きっと。