人気ドラマのカップルがほんとに電撃結婚

1999年から2003年まで、公共テレビ放送フランス2で放映されて人気を博したミニドラマがあった。題して「彼氏と彼女」(Un gars Une fille を直訳すると「男の子女の子」だがそれじゃ郷ひろみ)。 月曜から金曜まで、20時のメインニュースの直前に10分間放送されていた。30前後の恋人同士がああだこうだと痴話喧嘩を繰り広げるだけのたわいもないストーリーなのだが、そのたわいなさが逆に視聴者に小気味良く見えたのだろう。パリ発行の週刊日本語新聞『OVNI』2002年12月15日号でも紹介され、自分もフランス滞在時には毎日テレビの前に陣取ったものだ。
番組終了後6年。7月26日付の『ジュルナル・デュ・ディマンシュ』紙は、このドラマで共演した二人、ジャン・デュジャルダン(37歳)とアレクサンドラ・ラミー(37歳)が、25日に「本当に結婚した」と報じている(Un gars et une fille pour la vie. Le Journal du Dimanche, 2009.7.26, p.18.)。ドラマ撮影中に次第に親しくなり、番組が終る頃には役と関係なくカップルになっていて、そのことは秘密でもなかったのだが、事実婚が当たり前のフランス社会で、ここに来て法律上の結婚に踏み切ったことに意外性があったらしい。
ラミーの出身地であるアンドゥーズ(ニームの北西約40キロの町)で開かれる結婚式の準備はずっと秘密裡に進められてきた。ところが当日の朝になって、地方紙『ミディ・リーブル』が「世紀の結婚」(超大げさ)と題してすっぱ抜いたことから、ファンや野次馬約300人がアンドゥーズ町役場前の広場に詰め掛け、ちょっとした騒ぎに。
午後5時過ぎ、二人が広場に出てくると、一斉に歓呼の声が上がり、ひっきりなしに写真が撮られる。でも雰囲気はなごやかで、昔からの友だちの結婚を祝っているような感じ。非常事態に備えていた警官もヒマそうにしていた。このあたりがフランスの田舎の良さなのかも。
 役場での結婚式は30分ほどで終わり、再び広場に現れたカップルに、今度はおなじみのライスシャワーと万歳の声が降り注がれる。続いてその日の晩には近くの農場で祝宴が開かれたが、こちらの来客は広場の群衆とは違い、招待状でしっかり限定され、さらに「合言葉」で厳重にチェックされた由。
 実はこの二人は再婚同士。どちらにも子どもがいて、ラミーは10歳の女の子を連れ、他方デュジャルダンは2人の男の子の親権を手放したらしい。そのあたりの受け止め方はフランス社会もおおらかというか、「あるがままに」というか(日本でも芸能界は似たようなもの?)。「彼氏と彼女」以後、着実に役者としてのキャリアを重ねている二人。実生活も「痴話喧嘩」の絶えない楽しい(?)日々なのだろう。

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夜、NHKハイビジョンで、フランスの風景50選というのを見る。トークを最小限に抑え、風景をじっくり見せることに意を用いた番組。BSデジタルはこういったのんびりゆったりした番組がよい。もっとも3時間半の最後の方では眠気を催してきたけれど。