特集「パリの花が大好き」

角川マガジンズ発行『花時間』2009年9月号は、約70ページに綴じ込み地図も加えたパリの大特集。フルリストの仕事と日常、注目の花店など50のおすすめスポット紹介、日本からの花留学生の活躍ぶりなど、様々な内容の記事のどのページにも、多彩な色合いのフラワーアレンジメントがあふれていて、のんびり楽しめる。
アートとしての花を軸とした雑誌らしく、紹介されている花店はいわゆるブティック系と分類されるものが多くて、日常使いを考えると少し敷居が高いかも。でも一方「モンソー・フルール」といった「街角の花屋さん」も登場していて、自分としてはこちらの方がなごみそう。「30ユーロでブーケを頼んでみたら」という企画で、「うちは普通70ユーロぐらいからなんですけど」と答えた店もあった(リクエストには応じてくれたのだが)なかで、「モンソー・フルール」はさすが、しっかりたっぷりの花束を作ってくれていた。
実のところ全体に花束の色使いは、日本で見るものよりやや地味なように感じたのだが、記事のなかにきちんと説明があった。曰く、「パリのブーケ独特のニュアンスは、グリーンづかいによって醸し出される」のだそう。だから多くのアレンジメントが緑っぽい色調だったわけだ。パリテイストのアレンジのためには、主役の大輪は少量でも、葉はたっぷり大胆なぐらいに使うのがよいとのことで、なるほど。
トップフルリストのひとりとして、今回の特集で密着取材されているエリック・ショヴァン氏の店は、パリ7区、エッフェル塔アンヴァリッドの中間あたりと、もう1軒はパリ市街をデファンス方面に出外れたヌイイ市にある。綴じ込みの「パリ花歩きマップ」での紹介も、セーヌ左岸からモンパルナス、右岸ではマレ地区などに広がっていて、この地図を使って街を歩くと、鮮やかな花々だけでなく、観光地としてのパリとは違った都市の姿が見えてきそうだ。
1つだけ思ったこと。パリに花を訪ねる特集で、公園の扱いがかなり小さいのが意外。セーヌ沿いの植物園に至っては、一言の紹介もない(と思う)。ルイ13世紀以来の歴史を有し、数々の花々に彩られたフランス式庭園が広がる(『地球の歩き方』)植物園に行かない法はないと思うのだが。