年々増加する企業への苦情、対応はいかに

とかく現代のサービス産業で避けて通れないのがクレーム。「クレーマー」という単語が日本語として定着したのはそれほど昔ではないと思うが、大きく言えば「産業社会」から「消費社会」への転換の故か(ちょっと誇大)、市民が企業に文句をつけることに躊躇しなくなってきていることの結果ではあろう。ベルギーも例外ではないようで、10月19日付の『ラ・キャピタル』紙は、増加し続ける最近のクレーム事情を報告している(Plaintes des Belges, c’est l’explosion. La Capitale, 2009.10.19, pp.2-3.)。
クレームを受けるのは、企業自体、業種ごとのオンブズマン、消費者保護サービス機関などさまざまだが、例えば、消費者からの相談を受け付けて分析・勧告などを行い、関連する雑誌などを発行しているテスト・アシャ協会では、昨年1年間に寄せられたクレーム情報が約23万件。1999年の約2.3倍に増加している。協会のジャン−フィリップ・デュカール氏は、消費者が自らの権利を自覚し、また権利を守るための労力を厭わなくなったこと、さらにインターネットの発達で入手できる情報が格段に増えたことなどが、クレームの増加に影響しているだろうとする。また各業界の規制緩和が悪影響を及ぼして、苦情発生の事態が増えたのではないかとも見ている。
以下は各業界での苦情の実態。

  • 電気・ガス:企業の対応が遅いことが問われている。今年1月からワロン地域にオンブズマンが置かれたが、供給価格といった連邦レベルでの決定には権限が及ばないなどの問題も。
  • 郵便:ラ・ポスト(郵政公社)に対する苦情は、紛失関連(年間23万件−配達郵便数の0.07%)、さらに誤配のクレーム(配達区域のことをよく知らない配達人が多いためと言われる)などが多い。地元の郵便局に苦情電話をかけても、サービスセンターに自動転送されてしまうことの評判が良くないというのはオンブズマンの指摘。
  • 鉄道:ベルギー鉄道公社(SNCB)には、昨年約3万3千件の「反応」があった。これは前年比で6%増加しているが、SNCBは乗客増に見合った増加だと主張する。オンブズマンであるジャン−マルク・ジャンフィス氏によれば、運転の遅れや混雑が主な苦情の種で、特にいったん遅延が発生すると、あらゆる不満が噴出する傾向があるとのこと(これはわかるね、電車が遅れると皆が駅員にあることないことクレームつけるからね)。
  • バス:ワロン地域のバス交通を担うTEC社のステファンヌ・ティエリ広報課長は、半年間のクレームが約3,000件というのは乗客総数と比べればそれほど多いとは言えないと説明。苦情の内容は運行時間の遅延と車内混雑が多いようだが、「これは我々のバス事業が好調なことの裏面と言うべきです」との由。はあ、そう言えばそうなんだけど。
  • 電話:昨年オンブズマンに寄せられたクレームは、前年比6%の増加。課金体系、他会社への乗り換えによる解約時の費用負担などが主な対象となっている。

まあいずれもありそうな話で、日本でもベルギーでも、企業がクレーム対応に相当な労力を割きつつ、なお悩んでいるのは同じようだ。苦情にうまく対応できるのが優良企業と教科書的には言えるけれど、その域に達するまでにはいずこも試行錯誤を続けなければならないのではないか。