看護師の待遇向上に一歩

入院すると必ず何かとお世話になる看護師の方々。一定程度の専門性が要求される職種であるが、深夜や日祝日を含めた不規則な勤務を強いられるせいか、日本ではよく志望者不足が取りざたされる。どうやらフランスも基本的な図式は同じらしく、このたび待遇改善を主目的とした制度改革が実施されることになった。12月15日付の『ヴァン・ミニュート』紙は、ロズリーヌ・バシュロ厚生大臣にインタビューを行い、改革の概要や展望などを尋ねている(2000€ de plus par an pour les infrimiers. 20 minutes, 2009.12.15, p.10.)。
バシュロ厚生相によれば、改革の基本は、看護師の国家資格を日本でいう学士号と同等に扱うようにするということ。ヨーロッパでは概ね3年で大学卒業相当の資格が得られるが、フランスの看護師養成課程は1979年以降約3年間に延長された後も、大学卒業程度のステイタスが確保されてこなかった。具体的には今回の改革によって、公務員でいうランクがこれまでのカテゴリーB(いわゆる高卒、短大卒レベル)からカテゴリーA(いわゆる大卒以上レベル)に上昇し、その分給料もアップすることになる。5年の移行期間が終わって新制度に完全に移ると、今までより年額2000ユーロの給与増(税引後)が期待できるとのこと(直接の影響は、国公立病院に勤める看護師に限られるのではないかと思うけれど、間接効果もあるのだろう)。2009年以降養成課程に入る将来の看護師には、全員この措置が適用される。他方現職の看護師は、カテゴリーAに移るか、あるいは定年退職が5年早いカテゴリーBに留まるかを選択することになる。
制度改革の背景にある看護師不足はフランスでもかなり深刻。養成課程定員が3万人で、修了すれば確実な就職が期待できるにもかかわらず、看護師になるのは毎年約2万2,000人に過ぎず、入学者が足りないことは明らかである。今回の措置が実効性を持つのかは、今後5年ぐらいしないとはっきりしないだろうが、激務ぶり(これは日本もフランスも基本的には変わらないはず)をたびたび耳にするにつけ、少しでも彼ら、彼女らの待遇が向上することを願わずにはいられない。

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今読んでいる鈴木亨『ロワールの城』(駸々堂ニコンカラー双書、1976)に、こんな文章がある。
「つまり、フランスにとってロワール河流域は廃都なのである。パリが日本における東京というなら、ロワールは京都といってもいいような気がする。ロワールと京都と、両者に共通するのは、すでに歴史の主役の座を去った土地であり、それゆえにこそ過去の歴史が息を止めて昔のままに静止しているのだ。」(24ページ)
うーん、言いたいことはわからなくもないし、善意で書かれているのは間違いないのだが、100万都市京都が「廃都」であるように読めるのはいかがなものか。少なくとも京都では、良きにつけ悪しきにつけ、「過去の歴史が息をとめて昔のままに静止している」といったことはあり得ない。千年余の歴史を抱えつつ、東京に政治経済の中心を譲った今もなお、都市としてのダイナミクスを失っていないのが、まさに京都なのではあるまいか。ちょっと持ち上げすぎ?