ユーロトンネル内不通、責任は誰に

今冬のヨーロッパは寒波がことのほか厳しく、クリスマス前の週末は大荒れの天候となり、交通がマヒ状態となった。特に、イギリスとフランスをつなぐユーロトンネルでは、両国間を結ぶ特急「ユーロスター」5便が長時間立ち往生するという大混乱を招いたが、12月23日付のスイス『ル・タン』紙によれば、この混乱をめぐり、トンネル運営会社とユーロスター社が責任のなすりつけ合いをするという事態が生じているとのこと(Bataille entre Eurostar et Eurotunnel. Le Temps, 2009.12.23, p.4.)。
事の発端は、18日(金曜日)に雪を屋根に積み上げた状態でトンネルに入ったユーロスターが、トンネル内外の温度差によって雪が溶けたことで電気系統のショートを起こし、運転不能に陥ったことに始まる。結果的に相次いで5便がトンネル内で身動きが取れなくなり、乗客全員がトンネルから脱出するまでに実に丸1日近くかかってしまった。その後も列車の不通は続き、4日後の火曜日になってようやく通常に近い運転ができるようになったのだという。
この件に関する『ル・タン』紙の取材に対し、ユーロトンネル社側の関係筋(匿名)は、雪を載せてトンネルに入っただけで故障してしまったユーロスターの車両の脆弱性を疑問視する。しかも同じ時刻にトンネルを通行した自動車等運搬車(ユーロトンネル社運行)の方は何の問題もなかった由。関係筋は「当社の運搬車は、トンネル内外の温度差を克服するため、1車両あたり40万ユーロも投資しています。ユーロスター社は同様の対策を行っていたのか、車両維持費を必要以上に削減していたのではないでしょうか」と疑問を投げかける。
一方ユーロスター社はこうした主張に猛反論する。ニコラ・ペトロヴィッチ副社長は、ユーロスター車両が雪に弱いなんてとんでもないし、毎日車庫で入念な点検を行っている、ユーロトンネル社の車両(救援用の車両も含む)も同時期に3両も故障しているではないか、だいたい車両の維持管理の問題は日常的な運行状況をもって評価すべきで、こうした緊急時の故障をもってとやかく言われる筋合いはない、と激高気味。そしてさらに、トンネル内の救援体制はトンネル会社が基本的に責任を持つべきで、救援の不手際は我々の問題ではないと、あくまで強気な姿勢を貫いている。
事故に関する調査結果が1月末にもまとまるようなので、原因や責任の所在についてもある程度はわかってくることと思うが、一読した感じでは(記事の方向性によるところが大きいけれど)、列車を止めてしまったユーロスター社側が、やや過剰に自己防衛に動いているような気がする。これまでも2008年9月の火災などで痛手を被ってきたユーロスターユーロトンネル。飛行機やフェリーといった手強い競争相手もいるなかで、何とか自分の立場を正当化し、損害賠償やイメージダウンといった損失を最小限に食い止めようとする気持ちもわからないではない。ただ最終的に被害を受けたのは、なんといってもトンネルに閉じ込められた乗客、そしてクリスマス前の移動の足を奪われた乗客である。そこをあくまでベースにして、今後は両社連携した再発防止への道が取られれば良いのではないだろうか。