新年の新聞から(1)経済大予測?

元旦の日本の新聞というと、別刷り紙面が何種類もあり、その年の各界の展望などの記事が並んでいるのが普通(前年中に記事を書き溜めておくものらしいが)。フランスなどではそういったことはなく、だいたい正月がクリスマスの延長のようなところもあるから、元旦は祝日で休刊として、2日以降はほぼ通常の紙面(クリスマス休暇期間中は多少ページ数が少ないかもしれない)で発行されるようだ。そこで敢えてやや無理をして、正月らしい記事というのを探してみた。まずは1月3〜4日付『ル・モンド』紙に掲載されたコラムから、2010年の世界経済展望を(Dix raisons d’être (ou non) optimistes. Le Monde, 2010.1.3-4, p.20.)。
フレデリックルメートル氏のこの日の経済コラムは、「年の初めにあたり、(経済に関し)楽観視できる少なくとも10の理由がある。2010年バンザイ!」と始まり、以下その「10の理由」なるものが解説とともに列記されている。全部は面倒なので適当にいくつか取り上げてみよう。

  • 国家の復権:G20による調整によって、世紀の危機と言われた経済の混乱が終息した。
  • 金融部門の回復:健全な銀行なくして経済繁栄なし。金融が立ち直ったおかげで実体経済の再生も可能に。
  • リスボン条約発効:ついにEUの制度的課題が解消した。ファン−ロンパウ大統領の活躍に期待。
  • 社会的ネットワークの拡大フェイスブックツイッターの発達によって、世界はコミュニケーション新時代に突入。
  • 農産物価格の上昇:パーム油、綿花など。砂糖の値段は130%上がった。生産者にとって朗報。

好条件が10もあるのか、それは頼もしいと思いきや、ルメートル氏は突然語調を変えて「残念なことに10の不安材料もある」と言い出す。はてさて。これも全部は面倒なので一部だけ取り上げるが。

  • 国家の復権:フランスでは国家があらゆるところに姿を現している。地方分権の動きにもブレーキがかかる不安あり。
  • 金融部門の回復:銀行は危機から何も学んでいない。巨額ボーナスがその証拠。
  • リスボン条約発効:相変わらずEUの顔が誰なのかはっきりしない。構成国政府もEUに任せようという気はさらさらない。結局大して機能せず。
  • 社会的ネットワークの拡大:話し相手のいないアメリカ人は、20年で10%から25%に急増したという。どこがコミュニケーション新時代か。
  • 農産物価格の上昇:値段が上がったのは実需ではなく投機のせい。飢えに苦しむ数十億人にとっては悲劇でしかない。

もうお分かりだろうが、ルメートル氏によれば10のプラス要因がそのままマイナス要因なのである。結論としては、「経済なんて良くもあり悪くもあり」とか「経済展望なんて土台不可能」といったところか。さすがは辛口と皮肉で知られる新聞コラムである。