討論番組の人気司会者はあくまで謙虚

フランスに興味のある方ならたいていご存知のように、日々放送されているテレビ番組は日本に比べるとだいぶ地味な内容だ。いわゆるゴールデンタイムの放送でも、映画やドラマのウェイトが高く、お笑いや歌番組は少ない。あとは主にトーク番組とドキュメンタリー。トークもバラエティ色の強い日本とは異なり、討論的なものが中心になっている。
共テレビ放送局フランス・テレビジョンが持つ3つの主要なチャンネルの中で、日本で言えばNHK教育のような位置にあるフランス5。ここでウィークデーの毎日、午後5時45分から1時間強放送されている報道・討論番組「これが話題だ」(C dans l’air)は、2001年のスタート以来10年、放送2,000回を数える。4月12日付『メトロ』紙では、放送開始以来司会者を務めるイヴ・カルヴィ氏にインタビューし、人気番組の背景に迫っている(Yves Calvi “Il n’y a pas de sujet tabou”. Metro, 2010.4.12, p.18.)。
毎日130万人の視聴者を数えるこの番組をスタートからずっと仕切ってきたカルヴィ氏は、「始めたときにはこんなにうまくいくとは思っていなかったので、とても嬉しく思っています」とあくまで穏やかな物腰。「素晴らしいゲストと興味深いルポのベストマッチ」が良い放送には不可欠と説明して、出演者やスタッフに花を持たせるあたりにも気配りが感じられる。トークショーとして最初に評判を取ったのは、病院での35時間労働制に関する議論を展開した一連の放送。最近では、低投票率に終わった地方圏議会議員選挙の話題にも(投票率は低かったが番組としては)大いに注目が集まったという。
「これが話題だ」以外に、フランス2で放送されているより規模の大きい討論番組「クロスワード」(隔週放送)の司会でもあり、さらにラジオ(フランス・アンテール)で文化人などへのインタビュー番組もこなしているカルヴィ氏。デイリーの「これが話題だ」を軸にしながら、他の番組にも展開していると自ら認めつつ、「自分は公共放送を代表する司会者などではありません。民放にもときには出ますし」と、ここでもあくまで謙虚さを貫いている。
「これが話題だ」はインターネットで過去1週間の放送の視聴が可能。教養番組が中心のフランス5にはちょっと敷居が高い印象もあったが、今後は注目して見てみることにしたい。