外食の税引き下げ、効果は今一つ

昨年7月1日に外食に関する付加価値税の税率が引き下げられたことについては以前このブログに書いた(2009年7月12日)。外食産業の経営者団体と政府により昨年4月に官民協定が締結され、付加価値税をそれまでの19.6%から5.5%に引き下げるとともに、外食産業側では値下げ、雇用の確保、設備投資などに努力することが取り決められたのである。さて、協定以降1年が経過した現在の状況はどうか。4月27日付『ル・フィガロ』紙は、税率引き下げ効果のいわば中間報告を掲載している(TVA à 5.5%: les restaurateurs peinent à tenir leurs promesses. Le Figaro, 2010.4.27, p.19.)。
まず消費者が一番気になる価格の動向。協定では各外食事業者が最低7品目について税率下げ分の値下げ(10%強)を実施することが求められていた。この値下げが全面的に実施された場合、フランスの外食費用は全体で3%程度下がるものと想定されていたが、昨年7月から今年3月までの統計をみると下げ幅は1.17%にとどまっている。エルヴェ・ノヴェリ商業担当閣外相いわく「事業者の半分未満しか値下げしていない」とのこと。それでも、「付加価値税引き下げがなかったら、外食費はむしろ2%増加していたでしょう」と付け加えるあたりは、ちょっと業者に甘い感じ。
雇用面では、2年間で2万人の新規雇用の創出が協定時の目標。2009年後半に、レストラン、カフェ、ホテルの飲食部門など外食業界で新たに雇用されたのは5,300人。このペースが今年も維持できればこちらは目標達成もあり得る。
他方出遅れているのが設備投資。業界からの拠出に公的資金も加えて、老朽化した食堂の改築等を支援する「近代化基金」が設立されることになっていたが、ノヴェリ閣外相によれば、初の貸付案件が昨年末にまとまったといった程度の進捗しかないらしい。
実のところ、景気低迷を受けて不振が続くとみられていた外食産業の業況は、2009年全体を通してみるとかなり堅調だったようだ。コンサルタント会社の調査によると、フランス国内18万5,000件のレストランの売り上げは前年比2.2%増。人々が外食する回数も約4.5%増えている。総じてみると、外食に対する付加価値税率引き下げは、消費者のためというよりも、関連業界に恩恵をもたらす方向で推移しているのではないかという気がするのだが、手厳しい?