外国出身の神父さんが増えている

自分には具体的なイメージが湧きにくい分野だが、カトリック教会における聖職者任命の秘跡である叙階の場は、相当厳かな雰囲気に包まれているに違いない。ただやはり、フランスでの叙階をめぐる状況が、変化する時代の波を受けつつあるのは確か。6月27日付の『ジュルナル・ドゥ・ディマンシュ』は、ベトナム出身、34歳の青年に司祭への叙階がなされる様子を中心としつつ、このテーマに迫っている(. Le Journal du Dimanche, 2010.6.27, p.12.)。
6月26日、フランス国内で一斉に叙階が実施され、パリのノートルダム大聖堂では新たに9名の司祭が誕生した。そのうちの一人がジョセフ・ナム神父。本名をナム・グエン・ヴァンといい、パリで助祭として務めつつ神学を学んできた。
ナムの信仰生活は幼少期にまで遡る。ハノイの南、タインホア省にあるカトリック信徒の村に生まれ、教会での毎夕の祈りを欠かさないという家族で育った彼は、次第にキリスト教への関心を深め、また強い信仰心を持つようになる。7人兄弟の長男として、家業を継いで茶畑農民になるものと思い続けていたが、19歳でついに一念発起し、両親の許しも得て聖職者への道を踏み出した。司祭館で神学を学び始め、次いでハノイに出てフランス語を習得する。
やがてタインホアの司教であるグエン・チー・リニュ神父の勧めもあり、ナムはブルゴーニュ地方、サクレ・クール聖堂で有名なパレ・ル・モニアルの神学校に入学して、4年間勉学の日々を過ごした。亜熱帯のベトナムと比べ、フランスでの生活は特に気候面で厳しかったというが、彼は次第にブルゴーニュでの生活に溶け込み、校庭でサッカーを楽しむほどにもなったという。今回の叙階を契機に、パリで本格的な聖職者として活躍することになったナムについて、グエン神父は「フランスで神学を学んだのだから、今後しばらくの間、パリで活動するのは自然なことでしょう」と語る。
ノートルダム大聖堂のそばの広場には、叙階を終えた新しい司祭たちを一目見ようと、1万人もの人々が詰めかけた。その中の一人、同じベトナム出身で今は大聖堂のボランティアをしているステファン・サヴァーニ氏は、「ジョセフ・ナム神父への叙階には感動しました。というのも、フランスのカトリック教会とベトナムの関係は非常に強いものがあるからです。フランス人がインドシナで自らの拠り所としているのは、その地では少数派のカトリック信者なのですから」と説明している。
現在、フランス国内にいる司祭は2万人。信仰の衰微、現職者の高齢化などを理由として、ここ10年間で5,000人も減少している。こうした傾向を踏まえ、再びそれぞれの司教区での活動を活性化するには、外国人司祭の増加は不可欠と考えられており、現在のところ約1,500人が外国出身者となっている。アフリカから約800人、ヨーロッパ各国から300人強。アジアからの聖職者も100人を超えている(うちベトナムは10名程度)。ナム神父も当面フランスでのカトリック信仰を支える一人となっていくわけだが、ベトナムへのさらなる布教を展望するというよりも、まずカトリック大国であるはずのフランスを盛り立てる役割が期待されるところが、興味深いというか、そんなものなのだろうかというか。