むべなるかな、投資信託は縮小気味

90年代以降、日本の金融界が激動を続ける中で、個人金融の分野では「貯蓄から投資へ」というスローガンがもてはやされてきた。一般の人々も銀行預金だけでなく、もっと証券投資に関わってはという呼びかけだったかと思うけれど、その結果は現在どうなっているだろう(財産が目減りした人も少なくない?)。欧米は日本に比べて、(当時から)個人資金の受け皿として証券等の割合が相対的に高く、特に投資信託が普及していると言われてきたが、もちろん時代の状況によって趨勢は変わるもの。7月10日付の『ル・フィガロ』紙は、フランス版投資信託(SICAV)の最新トレンドについて報じている(Les Français retirent leur épargne des sicav. Le Figaro, 2010.7.10, p.25.)。
今年の第2四半期、フランスにおけるSICAVへの投資額は約280億フラン減少した。第1四半期と合わせると340億フランの減。相場下落分も含めて、この間に投資残高が5%減った計算になる。各国通貨の短期金利の動向に業績が左右される通貨ファンドで投資家の撤退が特に目立っているが、最近数ヶ月は株式投信(市場の振幅が激化)や債券ファンド(国債の信頼性に対する全般的な不信感増大)などでも投資減が露わになっている。2008年以来金融をめぐっては世界的な荒れ模様が続いているが、今般はこうした傾向がSICAVの業績に顕著に現れているらしい。
そんな折に発表されたボストン・コンサルティングのアニュアル・リポートは、さすがに投資信託市場の縮小などとは言及していないものの、フランスをはじめ先進国における市場はほぼ飽和しつつあり、今後成長が期待できるのはいわゆる新興国だろうとしている。同社のシニア層担当グループ長であるエレーヌ・ドナデュー氏は、「フランスは、退職者による投資にまだ拡大の余地があるものの、資産運用会社によって国民資産のかなりの部分がすでに管理されている国の一つですので」と事情を説明する。
ドナデュー氏によれば、最近はSICAVを投資対象として利用する人々の間で、より商品を吟味する傾向が強まり、また手数料の大小も選択に強い影響を与えるようになっているとのこと。資産運用会社の側でも、経費削減や得意分野への特化といった形で、経営の再構築を強いられていると言われる。
さて、投資信託を回避する資金が目立ってきたというフランスの昨今、その資金はいったいどこに向かっているのだろう?ヨーロッパ各国、銀行の安全性も以前ほど堅固とは言えなくなっている(もちろん預金保険は整備されているが)中で、銀行預金が受け皿たりうるのか、それともひょっとしてタンス預金か?この種の話が日本でも全く人ごとでないのは言うまでもない。