TGV延伸を機に都市再開発目指すトゥールーズ

ボルドーピレネーといったフランス南西部には、実はまだ行ったことがない。パリを拠点とした場合、鉄道での移動に時間がかかるのがその理由の一つ。フランス第5の都市圏であり、古代ローマ都市以来の歴史を誇るトゥールーズへの道のりは、列車でパリから最速5時間以上かかる。もっとも、だいぶ先の話ではあるが、現在トゥールまでのTGVボルドー経由でこの街まで約500 キロ延伸する予定もある由。10月25日付『ラ・クロワ』紙は、TGV開通を見越したトゥールーズの再開発計画について紹介している(Toulouse mise sur le ≪projet Matabiau≫. La Croix, 2010.10.25, p.5.)。
約30年間の計画期間を経て、2020年にTGVが到達する予定のトゥールーズ・マタビオ駅。アヴィニョンやエクス−アン−プロヴァンスのように専用駅を設けることも考えられたようだが、結局中央駅まで新路線を引き込むことに決めた背景には、この機会に都市再開発を大規模に進めたいとする市当局の強い意気込みがある。
再開発の対象となるのは、駅のすぐ周囲の170ヘクタールに周辺地域を加えた計350ヘクタールにのぼる。線路をトンネル化してその上を開発整備するか、ビジネス区域、商業区域及び居住区域をどのように配置するかなど、総額400万ユーロをかけて実施された再開発に関する一連の調査が、今年末までにはほぼまとまる見通し。ダニエル・ベニャイア都市計画担当助役は「我々は、駅とその周辺だけでなく、中心市街地全体にインパクトのあるような大規模な再開発を検討しているのです」と語る。
問題は、再開発対象地域がかなり乱雑な土地利用状況にあること。ミライユ大学名誉教授のロベール・マルコニ氏は、「過去30年間、あちこちでばらばらに不動産整備が行われた結果、全体として一貫性がまるでない地域になってしまいました。今度こそこうした虫食い開発を乗り越え、全体としてのビジョンを作り出さねばなりません」と主張する。それはまさに市当局の狙いでもあるのだろうが、市中心部のキャピトル広場に向かう主要道路の新たな整備手法や大規模建築物の構成の仕方など、具体的なプランについてはまだ一般論の段階を出ないのが現状らしい。調査結果が公になれば、多少は具体的なイメージが湧くようになるのだろうか?
ともかく、現在900万人規模(国内第6位)にあるマタビオ駅の乗降客数は、TGV開通後は少なくとも1,500万人まで膨らむと想定されている(日本の新幹線と同じで、そんなに予定通り路線が延伸されるのか疑問ではあるけれど、それはまあおいといて)。郊外線や地下鉄、トラム(ミディ運河沿いに建設予定)、バスなどで同駅に集まり、散っていく人々をうまくさばきつつ、新たなダイナミズムを生み出す都市計画を構築し、実現することができるか。トゥールーズ市としてはリール市の成功事例(パリ、ロンドン直通のTGV駅を軸に新街区「ユーラリール」を形成)に学びたいようだが、構想力がどれだけ発揮できるかは今後にかかっている。