観光都市パリの評判はまずまず

今では花の都という形容こそあまり聞かれないとは言え、相も変わらず世界有数の観光都市であり続けているパリ。行政や関連業界でもそういった自負なり自意識といったものはあるようで、その分悪い評判には敏感らしい。11月18日付の『ヴァン・ミニュート』紙パリ版では、観光協会が公表したパリに対する評価についての調査結果を報じている(Les pros du tourisme pas si nuls. 20 minutes Paris, 2010.11.18, p.2.)。
観光協会、正確に言うとパリ・イル−ドゥ−フランス地域圏観光協議会がこのたび公表したのは、調査機関DMS社によって実施された、アムステルダム、ベルリン、ロンドン、マドリッド、ローマ及びパリの6都市における、外国人観光客に対する利便性やホスピタリティに関する調査の結果。去る4月と5月に、5人の外国人覆面調査員がそれぞれの都市にまる1日滞在し、約100のポイントについて評価を実施したものが集計されている。この調査でパリは、ロンドンの後塵を拝したものの、アムステルダムと同着2位を確保。ちなみに、マドリッドとローマが4位で、わずかの差での最下位がベルリンという結果になっている。
パリで高い評価を受けたのは、空港での情報提供、美術館(調査対象になったのはルーヴル)入館時の対応、そしてタクシー。一方査定が芳しくなかったのが、中心市街地の公共交通機関(地下鉄)の利便性、また観光バスの運営等となっている。ただ、地下鉄については、設備が悪いとか本数が少ないといった点ではなく、自動販売機で切符を買うのが難しいという感想が評価を下げたらしく、それはやむを得ないのではないかとの見方もあるようだ(切符の自動販売機は外国人ならずとも複雑に思えるときもありそう)。
自由乗降型の観光バスを市内で4路線営業しているオープンツアー社のポーラ・ヴィラヌーヴァ氏(ビジネス部門責任者)は、受付担当職員の語学力は相当高いものの、運転手はそれほどでもないと問題の所在を率直に認める。そして、このオフシーズンは各ドライバーに何日かずつ受付業務を担当させ、サービス向上に役立てる、また現在でも、混雑時には予定より多くのバスを運行することで、待ち時間の短縮を図るなどの努力をしていると説明する。パリも季節や時間帯によってはかなりの道路渋滞が生じるので、この種のバスを円滑に運営するのは、正直に言って難しいこともあるだろう。
ともかく、ヨーロッパ諸都市の中でパリの評価が第2位であり、この街の観光客からの評価は悪いのではないかという漠とした疑惑(そんなものがあったのか?とも思うが)が打ち消されたのを喜んでいる人は多いようだ。観光協議会の会長であるジャン−ピエール・ブラ氏は、「自己批判は止めましょう。パリには旅行客の受け入れなどできないと言いだすのはよしましょう」と述べて、新たに将来のサービス向上に目を向けさせようとしている。それは大変結構なこと。ただ、一日本人観光客の立場からすれば、ロワシー空港から北駅に向かうRER内で頻発している荷物持ち逃げ事件をきちんと摘発してくれさえすれば、旅の初めから印象を悪くする人が少なくなり、ひいてはパリの街に対する評価を大きく高めることになるのではと思うのだが。