塩分がやっぱり気になる食生活

日本人の食生活の問題点としてこれまでしばしば指摘されてきたのが塩分の摂取過多。ごはんと味噌汁、漬物をベースにした食事ではついつい塩分が増えがちと言われてきたが、最近は欧風化が進んだ結果、塩分を厳しく制限すべき一部の患者さん以外は、(例えばコレステロールなどと比べて)問題視されることが少なくなったように感じる。さて、食生活上ある種の「模範」とされてきた当のヨーロッパの状況はどうか。11月23日付『ル・モンド』紙は、フランスの塩分摂取をめぐる現状とその問題点に関する記事を掲載している(Le sel trouve de moins en moins sa place à table. Le Monde, 2010.11.23, p.23.)。
国が実施している調査の結果によれば、2010年現在のフランス人の塩分摂取量は1日当たり8.4グラム。西暦2000年頃には10グラムほどあったのでそれと比較すれば多少は減っているが、フランス保健省で推奨している上限の6グラムをまだかなり上回っている(ちなみにWHOの基準では5グラムが上限)。しかも、塩分を6グラム以下しか摂っていない人は、女性で18%、男性では5%しかいないとのこと。塩分の摂り過ぎは高血圧はもちろん、骨粗鬆症、腎臓病、ぜんそく、さらにある種のガンなどの誘因になる場合もあると言われ、摂取低減は国を挙げての一大課題とされる。にもかかわらず、フランス国立保健医学研究所(INSERM)の栄養疫学研究グループ長であるセルジュ・エルクベール氏が漏らすように「(目標への)道のりはまだはるかに遠い」のである。
どのような形で塩分が取られているかについても調査されていて、全体の4分の1が調理の過程、もしくは実際に食べる時に振りかける塩。それ以外の4分の3は各食品に含有されている塩分で、具体的にはパン・ラスク(24.2%)、ハム・ソーセージ(12.5%)、出来合いの食品・惣菜類(12.5%)、チーズ(8.2%)、野菜(6.8%)、スナック・ファストフード(5.9%)などと続いている。スナック類からの塩分が意外に少ないのはやはりアメリカとは文化が違うということか。パンとかチーズといったあたりはある意味お国柄を感じさせる。
政府では、国民の塩分摂取をさらに減らすべく、全国健康栄養プログラム(PNNS)の枠組みでキャンペーンを継続する方針。こうした動きに応えて、塩分控えめ、風味そのままのパンやスープを開発する企業も出てきている。いくつかの大規模食品メーカーでは、塩分含有量の減少を目指す憲章なるものを打ち出したとのこと。グルメ、グルマン、ガストロノミーの国フランスには似合わない展開のようにも思えるが、健康志向の世界的な趨勢には抗えないというのが実情だろうか。