赤ちゃんの肥満傾向に要注意

肥満がどの世代にとっても健康上悪影響を及ぼしかねない問題だというのは、まず自明なことなのだろうが、成人や子ども一般はともかく、乳幼児の肥満というところまではこれまであまり考えたことがなかった。3月15日付『トリビューン・ドゥ・ジュネーブ』紙の記事に示された最近のスイスでの実情を見る限り、こちらの方もかなり深刻な状況になってきているようだ(Obésité des tout-petits: des chiffres inquiétants. Tribune de Geneve, 2011.3.15, p.19.)。
今般明らかにされたデータは、毎年約3万人の小児患者を受け入れるジュネーブ大学病院小児科入院・急患部のガブリエル・アルコバ博士が発表したもの。大人と同じようにBMI指数(身長の二乗を体重で割った値)を基本としつつ、年齢や性別によって異なる身長体重曲線を考慮に入れて判定を行う。それによれば、2歳から4歳までの乳幼児の9%が太り過ぎの状態にあり、また5歳以下の子どもの3%が「肥満」と判断されている。5歳より上の子どもの事情については、これまでもジュネーブ州教育省青少年局で統計が採られていたが、5歳以下の統計はこれまで存在していなかった。乳幼児期に太り過ぎてしまうと、その後も肥満が続く可能性が高くなり、高血圧などの割合も増加するという研究結果が出ているだけに、今回出された数値はかなり衝撃的、かつ問題を孕んだものとして受け止められている。
乳幼児の肥満の要因については国際的な研究において既にいろいろ取り沙汰されていて、栄養学的な問題(砂糖を含む飲料、脂肪過多な食事等)や運動不足、睡眠不足、遺伝などが原因たり得るのではないかと言われる。もちろん複合的な要素が絡みあっているのだろうが、少なくともスイス国内では、ジュネーブ以外の地域で比較できるデータは見当たらないのが現状。
さしあたりジュネーブ大学病院では、乳幼児の肥満対策としていくつかの推奨ポイントを明らかにしている。まず、6か月までは可能な限り授乳のみで栄養を与えること。それ以後はできるだけ加工食品を使わず、栄養バランスに留意すること。同院の小児科専攻医であるナタリー・ファルプール−ランベール氏によれば、つまりは「おばあちゃんの手作り」というのが乳幼児にはベストなのであり、巨大食品産業から供給されるものに頼り切ってはいけないということのようだ。
さらに、乳幼児を1つの姿勢に固定することなく、抱いたり座らせたりすることで自然な運動をさせることも大切(車中でもないのに一日中チャイルドシートに固定させておくなどは非常に望ましくない)。テレビも2歳までは極力遠ざけ、2歳以上でも1日30分以内にすることが勧められているが、これも運動不足を防ぐための方策の一つだろうか。
要するに、今以上にもっと赤ちゃんに構ってあげれば、自然と病院の推奨に従うことになり、肥満が防げる可能性が高いということになる。もっとも、両親共働きで他に面倒を見る者がないという現代の環境では、それこそがなかなか難しい課題。ワークライフバランスのあり方がこんな場面でも問われているのだと言えそうだ。