パリの路上駐車、もうすぐ値上げか

都心部での駐車場問題は、マイカー利用者にとってはいつも悩ましいもの。そもそも公共交通機関を使えばよいという反応が大いに予想されるけれど、何かの都合で都心に車で行かなければならなくなると、停める場所がないというのはともかくとして、仮に場所が見つかっても、駐車時間によっては料金が驚くべき額に達することになる。路上を駐車スペースとして活用するのが一般的なパリでも、駐車料金をめぐる問題は似たようなものらしい。3月19日付『ル・パリジャン』紙パリ市内版では、6月から一部地区で料金の値上げが計画されているというテーマについて、見通しと反応を報告している(L’heure de stationnement coûtera plus cher. Le Parisien – Le Journal de Paris, 2011.3.19, p.1.)。
パリ市内の路上駐車料金は地区ごとに固定されており、一番の中心部で1時間当たり3.60ユーロ。外側に進むに従って2.40ユーロ、1.20ユーロと、計3つのゾーンに区分けされている。今回検討されている改革案の骨子は、料金体系そのものについては変更せず、ゾーニングに多少の改訂を加えようというもの。明らかになった計画によれば、セーヌ左岸のルーブル宮、オペラ座シャンゼリゼ凱旋門の周辺など(1区、2区のほぼ全域、8区の南半分等)にこれまで限定されていた3.60ユーロの区域がセーヌ左岸及び市役所の東側方向に広がり、3区から7区までのほとんどの地域が最高額の駐車地帯になる。今のところ最も安い1.20ユーロ地域にあるモンマルトルの丘付近(18区)やパリ南東側の13区の北部区域は、2.40ユーロ(つまりこれまでの倍額)に値上げ。そしてさらに外延の地域、例えば15区の大部分や18区から20区までの全域は引き続き1.20ユーロが維持される見通しとなっている。
市役所交通局によると、こうした値上げの目的は、今まで路上駐車より一般に高額だった地下駐車場の料金を「相対的に」安くしてその利用を促進し、16万か所ある路上駐車スペースを円滑に利用できるようにするということ。また、モネオ(電子マネー)を所持するか「パリ・カルト」という駐車カードをタバコ屋で買っておかないと使えなかったパーキングメーターを改修し、順次クレジットカードを利用できるようにするという。さらに、市内居住者が住まいの近くに駐車する際の料金は1日当たり0.65ユーロに据え置くとも説明することで、何とか新しい政策を正当化し、かつ市民の理解を得られるよう努めている。
しかし要は値上げであるから、関係者としてははとてもそのまま納得するわけにはいかない。モンマルトルのオルセル通りで商店を開いているヨニ・レヴィさんは、「2倍なんて、そんなのありえないよ。自分みたいに郊外に住んで市内で働いている人間には車が必要なんだ」と腹を立てる。近くには地下駐車場もあるが、こちらは1時間2.80ユーロなので、モンマルトルでは路上に駐車するより高い。最後には彼も「スクーターを買おうかと思っているよ、そうでもしないと支払いを減らせないからね」とあきらめの様子。
実は市役所には、パーキングメーターを使ってきちんと料金を払っている利用者は10人に1人程度しかいない(本当だとしたら、9割の車がルール違反ということ?)という厳しい現状認識がある。これはパリ以外の地方の約3分の1の支払率とか。フランス政府が法規改正により、駐車違反の罰金をこれまでの11フランから17フランに引き上げたというタイミングを受け、厳罰化と利便性強化の2本立てで、なんとか路上駐車制度を円滑化させたいという思惑が見て取れる。もちろん試算もなされていて、電子マネー対応への投資に1,300万ユーロほどかかる一方、パーキングメーターからの料金徴収は(値上げ分と徴収率アップ分で)1年当たり400万ユーロ増と想定しているらしい。一方ではドラノエ市政の野党である保守派の市議会議員から、「ドライバーに必要以上の負担を押し付けるもの」と反対の声も上がっている状況のようだが、さて、今後の展開はどうなることか。