パリ市役所で印象派などの無料展覧会

19世紀半ば以降、当時のセーヌ県知事であったオスマンが推し進めたパリ改造計画は、並行して生じていた都市環境の近代化とも相まって、現在の市街地の景観を決定づけるものとなった。そしてその後、台頭しつつあった印象派の画家たちがこの景観を題材にすることによって、当時の面影が優れた絵画の中に現在まで残されるに至っている。4月18日付のフリーペーパー『メトロ』紙パリ版は、その時代のパリの様子をいきいきと描いた絵画等を展示する、パリ市役所内で開催中の展覧会について報じている(Le Paris de la fin du XIXe siècle sublimé par les impressionnistes. Metro Paris, 2011.4.18, p.10.)。
印象派時代のパリ」と題されたこの展覧会は、オルセー美術館が所蔵している約60点の絵画、また同じぐらいの数のデッサンなどを、同館の部分改修を期に借用し展示しているもの。借用された作品のかなりの部分が、オルセーでは展示されず倉庫に眠っているものというのだから驚く(それにしても、パリの美術館はどこもしょっちゅう改修改築しているように思わないでもないが、気のせいか)。
一部とは言え、非常に著名な絵も貸し出されていて、例えばモネの「サン−ラザール駅」は、パリのターミナル駅に行き交う蒸気機関車や駅舎周辺を鮮やかに写し出した傑出した風景画というだけでなく、確かに展覧会の意図通り、近代化の進むパリの表情を活写した代表的絵画の一つと言えるだろう。さらに、エドゥアール・ヴュイヤール(彼は印象派というよりその後の「ナビ派」に属するが)の「窓からみえるサクレ・クール」、また建築家によるデッサンなども、同様に19世紀パリの風景を捉えるよすがとなる作品と言える。
こうした絵画などから浮かび上がるのは風景だけでなく、当然とは言えその時代の風俗や人々の生活でもある。一例を挙げると、ドガの「カフェテラスの女」は、客の表情なども含め当時のカフェ文化の有様をよく伝えている。一方ジャン・ベロー「舞台が跳ねて」は、この時代の劇場をめぐる情景を鮮やかに切り取ったもの。他にも著名な画家たちの作品を揃え、一時代のパリをいろいろな角度から照らし出すことを試みているこの展示、具体的にはいくつかのテーマ(建設が進むパリ、芸術家の生活、社交界の生活、等)に分かれて構成されており、また子どもには「鑑賞ノート」が配られるなど教育上の配慮もなされている。
パリ市役所での展覧会はしばしば企画されているもので、今回の展示は6月30日まで。日祝日を除く午前10時から午後7時まで開いており、入場は無料。例えばノートルダム大聖堂への観光のついでなどにちょっと立ち寄ってみるとよいかもしれない。