カルフール、新型店舗を大規模展開へ

2000年の幕張店を皮切りに首都圏・関西圏に進出したもののさほどの成功を収められず、2010年には日本での店舗が全面消滅してしまった、フランスを代表する大規模小売企業カルフール。広大なフロアに食料品から衣料品、家庭用品、オーディオ、書籍まであらゆる商品を展開し、カートを使った一元販売を基本とする「ハイパーマーケット」というスタイルが、日本には今一つ受け入れられなかったということと理解していたが、昨今ではどうやら本家ヨーロッパでも業態自体が曲がり角に来ているらしく、フロアコンセプトの見直しなど改革案が打ち出されている。4月15日付ベルギー『ル・ソワール』紙は、同国内にオープンした新型1号店の特徴をレポートし、新機軸の行方を展望している(Carrefour mise gros sur ses hypermarchés planet. Le Soir, 2011.4.15, p.25.)。
ブリュッセルの南西約50キロ、人口約10万人の都市モンス市の郊外、パリとブリュッセルを結ぶ高速道路沿いに立地するカルフールが、4月14日に「カルフール・プラネット」という新しいブランド名でリニューアルオープンした。昨年初め以来、カルフール・グループ本部では既存店舗のかなりの部分を「プラネット」という新しい業態に移行する方針を打ち出し、実験店をフランス、スペイン、ベルギーに設置して検討を進めてきたが、モンスの店舗は本格稼働した「プラネット」の全欧第1号店。ベルギー国内ではウォータールーに置かれたパイロット店の売上高がそれまでより約10%アップしたという実績もあり、ベルギー・カルフール社のジェラール・ラヴィネー社長も、「これは単なる新装開店ではありません」と力を込める。
ラヴィネー社長が率直に認めるのは、同社がこれまで掲げてきた「あらゆるものを一つ屋根の下に」というコンセプトが、消費者に飽きられ始めて久しいということ。全てのジャンルの商品がめりはりなくワンフロアに展開されているという従来型の店では、買い物するためにはとにかくカートを押して長い距離歩かねばならず、消費者は次第に、イケア、H&Mデカスロン(スポーツ用品チェーン店)といった大規模専門店に目を向けるようになっていったとされる。こうした状況から脱却するため、カルフール本部ハイパーマーケット開発部長のアルノー・ドゥ・ロージエール氏は、「プラネット」において「ハイパーマーケットに来店する楽しさをお客様に再び感じていただける」ようにしたいと力説する。具体的には、以前より通路を広げ、きちんと区分けされたコーナーにそれぞれの種類に属する商品を展開、従業員による商品説明等を充実させるとともに、これまで以上に価格志向を強めるという方策が示されている。また、よりすっきりした売り場づくりのため、大工道具、おもちゃ、家電製品といった、今後の売上げの伸びを期待できない分野は、思い切ってスペースを縮小することとしている。
では、モンスの「カルフール・プラネット」の中を少し詳しく見てみよう。「マルシェ」と名付けられたコーナーでは、これまでの野菜、肉、魚の売り場を統合し、まさに市場のように開放的なひとまとまりの空間を作り出すとともに、特に地元の農産物や有機栽培された商品にこれまで以上の力点を置いている。ワインコーナーには試飲用カウンターを設置し、数々のおすすめワインの販売を後押し。入口近くには、新学期、クリスマスといった季節の行事などに合わせて、10日ごとに商品が入れ替わるコーナー、そして一押し特価品のセールや販促イベントを行うコーナーを新設。さらにマルチメディアコーナー、書籍コーナーは特に強化され、品揃えの充実を図るとともに、PCなどの試用、ソファでのマンガの立ち読みならぬ座り読みなどもできるようになっている。
正直言って、これまでのハイパーマーケットに対しどれほどの改革になっているか、多少疑問に思わなくもないが、消費者にとってより居心地の良い空間にするため工夫をしていることはなんとなく伝わってくる。それに加えて価格志向も強めるということになれば、消費者の関心をそれなりに引くだろうし、そのことは結果として業績にもつながるのではないか。ラヴィネー社長は一連の店舗改装のための投資額を明らかにしていないが、今年中にベルギー国内で9店舗(ちなみにカルフール全体では92店舗)の「プラネット」への移行を予定しているという。一方でベルギー・カルフール社としては、ハイパーマーケット8店、普通のスーパーマーケット3店を閉店させ、別のスーパー20店舗をメスダッハ・グループ(ベルギー国内でスーパー「シャンピオン」を経営)に譲渡する等のリストラも既に進めつつあり、確かに業容回復への意欲は強く感じられるが、さて今年後半以降、これが具体的な数字となってどのように現れてくるか。